#16 〜 #20

#16 月よ!こたえて 
追撃を振り切り、月基地へと接近するシャトル。だが宇宙救助法で定められた緊急コードを使用しても、一向に
月面基地からの応答が無い。このままでは間違いなく、着陸寸前に米ソどちらかの軍の攻撃を受けてしまう。
自分たちの乗っているシャトルが地球の物ではない事に不安を覚えるアンナ達。エイジは未だレイズナーに閉
じ篭ったままであった。

レイズナーのコックピットで一人涙するエイジ。ゲイルの死は避けられない宿命だったのか。だがゴステロを討っ
た時にも、レイズナーが自分の意思に反して暴走した事に気付く。エイジはレイに残された過去の戦闘データを
呼び出すが、何故かゴステロとゲイルの死の直前だけ記録が残されていなかった。最後に主砲が発射された時
に記録した異常なエネルギー消費の原因を問い詰めるが、レイは頑なに全て正常と返すばかり。レイズナーに
は自分の知らない何かが存在する―――言い知れぬ不安をエイジは覚えた。

一方、愛するゲイルを討たれたカルラは、エイジに復讐を誓い、上層部に月面基地への降下の許可を求める。
だが作戦進行の妨げになるとして、月面降下はおろかゲイルの遺体回収すら許可されなかった。軌道変更を促
された彼女の目に涙が光った。


依然応答の無い月基地へと降下を開始するシャトル。知らせたいと思った、たった一つの事さえ伝えられないと
いう体験を嫌というほどしてしまったアンナ達は、例えようもない不安に包まれる。明るい話題で気を持ち直そうと
するが、国連月(ルナ)基地は既にグラドス軍の攻撃で壊滅状態となっていた。


生存者を探して地下都市に下りるレイズナーとベイブル。破壊された公園や店に人影は見えない。デビッドはエ
イジと共にかつて半年間過ごした宿舎に向かうが、そこもただの瓦礫の山となっていた。しかし崩れ落ちた通路
の先に、一機の戦闘機が不自然に置かれている事に気付く。近付いて確かめようとしたデビッド達は一斉攻撃を
受けるが、それは目を負傷した一人のアメリカ軍人と、逃げ遅れた体験学校の小さな子供たち。
子供たちを率い
ていたのは、エリザベスのかつての恋人・クレイトンだった。


『あれが何なのか、子供達の方がよく知っている』
#17 群がる殺人機
月基地を壊滅させたのは、新型の無人攻撃機だった。感情を持たない無人攻撃機は、執拗に生存者を狙う。
クレイトンは視えない目の代わりを子供たちに努めて貰いながら、必死に生き抜いていたのである。レイズナーと
ベイブルが敵を引き付けている間に、エリザベスは子供たちとクレイトンを連れてシャトルへと避難を開始する。

三機の無人攻撃機を相手に戦うエイジとデビッドに不安を覚えるクレイトンだったが、自分たちが傍に居てはか
えって邪魔になると諭し、エリザベス達は気密室に身を潜める。やり直す事は出来ないのかと問うクレイトンに、
エリザベスは寂しげな微笑を浮かべただけだった。地球はおろか、宇宙まで戦いに満ちているというクレイトン。
軍人のそういった考えが宇宙進出を歪め、グラドス人を招き寄せる結果になったというエリザベス。二人の間に
は、今も埋められない深い溝が出来てしまっていた。

無人攻撃機の探知を逃れ、格納庫まで地下ケーブル道を進んでいたエリザベス達だったが、地上に出た所で
見付かってしまう。地下施設の壁面を破壊しながら、最短距離で援護に向かうレイズナーとベイブル。クレイトン
が捕捉された直後、二機が地上へと飛び出す。八人の子供たちとクレイトンを無事にシャトルに迎え入れる事
が出来たアンナ達の顔には、自然と笑顔が浮かんでいた。

『さあ皆、あのシャトルで地球へ行くんだ』
#18 そして地球へ
子供達を収容した後、シャトルは直接ブラジルの国連基地を目指す事になった。軌道を計算した結果、出発は
約一時間後。それまでしばしの休息を取る事になる。新しく仲間に加わった子供たちと自己紹介を交わすアンナ
達だが、子供達の表情はまだ硬い。だが間も無く地球に帰れるのだと告げられて、ようやく彼らの顔にも笑顔が
戻った。


グラドスの地球侵攻の本隊であるグレスコ艦に、グラドス本星からエイジの姉、ジュリアが派遣された。弟を説得
する為だと聞かされていたが、もはやその必要は無いと言い渡される。月面の米ソの基地を互いに争わせれば
その戦火はすぐにも地球へと飛び火するだろうと思われていたが、月面基地が壊滅した今も地球では何の動き
も無い。従ってグラドスは間接的な干渉ではなく、直接介入を決定したのだ。グラドス人として死ぬ覚悟があるか
と問われ、勿論だと即答するジュリア。その覚悟はゲイルの死を知ったからかと切り出され、彼女の面に驚愕が
浮かぶ。追い討ちをかけるようにカルラが冷たく言い放った。ゲイルを殺したのは、お前の弟だと―――


ブリッジで賑やかに遊ぶ子供たち。だがそんな騒々しさの中で、エイジは操縦席に座ったままコンソールパネル
に突っ伏して眠ってしまっていた。僅かな時間に深い眠りに落ちたエイジに、アンナとシモーヌは互いを見遣っ
て笑みを浮かべる。それは彼が、自分たちにすっかり気を許している証だった。

その頃、クレイトンの眼を診たエリザベスは傷が悪化している事に気付く。このまま放置していては失明するかも
しれない。彼女はシャトルが地球に向け出発する前に、医療施設から薬を探して来る決意をした。


シャトルが月を発つ直前、アーサーがエリザベスの姿が無い事に気付いた。直ぐに戻るから心配しないでと彼
女は通信で答えるが、無人攻撃機が月基地に接近する。シャトルをアーサーに任せ、エイジ達は彼女を救援
に向かった。辛うじてエリザベスを救出する事には成功するが、刻々とシャトル出発の時間が迫る。多くの無人
攻撃機に囲まれ、危機的状況に陥るレイズナー。だがかつて同じ危機的状況で暴走したレイズナーの謎を突き
止める為に、エイジは敢えて踏み止まった。

『見届ける…見届けてやる!!』


蒼い輝きに包まれるレイズナー。操縦桿に手すら触れていない状況で、次々に無人攻撃機が撃破されていく。
レイズナーの起死回生の戦いで無事全員月を脱出する事は出来たが、魔物が取り憑いたかのようなその戦い
に、アンナは素直に喜ぶ事が出来なかった。


『お前は…レイなのか!?』
#19 とどかぬ想い
無人攻撃機を壊滅させ、月を脱出したシャトル。圧倒的なレイズナーの戦いに素直に感心するデビッドだが、エ
イジは複雑な表情を浮かべる。レイとは違う、別のコンピューターによる制御不能はこれで三度目。一体、レイズ
ナーにはどんな秘密が隠されているのか。まるで人が変わったように見えたというロアン達に、エイジは曖昧な
返事をする事しか出来なかった。

地球へと接近を続ける未確認飛行物体に、色めき立つ地上。各国の軍事衛星からシャトルは攻撃を受けるが、
エリザベスの通信が国連基地に繋がり、ようやく味方と識別される。国連本部長のギルバートは詳しく事情を話
すようにと促すが、エリザベスはその説明をエイジに譲った。グラドスから地球の危機を報せに来た少年の名を
聞き、ギルバートは驚愕する。エイジの父ケン・アスカを宇宙へと送り出したのはギルバートであり、また彼はケ
ン・アスカの親友でもあった。『お会いしたいです、早く!』『私もだ、エイジ』遠い二つの星に別れた友が、エイジ
を介して再会を果たそうとしていた。

大気圏を抜け、眼下に広がる大地と海に大喜びする子供たち。初めて目にする地球の風景に、エイジの面にも
歳相応の笑顔が浮かぶ。だがあと少しで目的地に到達するという時になってグラドスの追撃隊が現れる。その
中にゲイルのSPTと同型機があるのを見て、エイジは歓喜の声を上げた。もしかしたらゲイルは救助されて、一
命を取り留めたのかもしれない。だが紅いカイザルのパイロットは、恋人であるゲイルを殺されたジュリア―――
血を分けた、エイジの姉だった。エイジの呼びかけに答えぬまま地球側の援軍が到着し、追撃隊は撤収していく。

エイジ達の乗ったシャトルは当初の目的地であったブラジルの国連基地から、アメリカのエドワーズ空軍基
地へと誘導された。笑顔で地上へ降り立つ子供たち。だがようやく地球へと帰還した彼らを出迎えたのは、戦車と
銃器の砲列だった。子供たちは監視付きの部屋へと押し込められ、エイジは捕虜として全裸で軟禁されていた。
屈辱に耐え、こんな事で挫けはしないと父に誓うエイジ。だが自分だけではなく、レイズナーが解析される事に危
機感を覚えた彼は、監視カメラ越しにレイズナーには触れるなと警告する。だがその警告に耳を貸す事無く、地
球人技術者達はSPTの解析に掛かっていた。

『僕の身体を、血の一滴まで調べるがいい。地球人と同じ血が流れているんだ。
 そして僕の心の中も調べてみればいい。僕が命懸けで何を伝えに来たか、判る筈だ!』
#20 レイズナーの怒り
病原菌のチェックの後にアンナ達を待っていたのは、厳しい質問攻めだった。軟禁され、マジックミラー越しにグラ
ドスの軍事力や、何故エイジと行動を共にしていたのかを詳細に聞き出されるアンナ達。地球人である自分たちに
対してさえこれ程までに厳しいとするならば、異星人のエイジは一体どんな扱いを受けているのか。エイジの身の
上を思うと仲間達の表情は優れなかった。
ようやく取調べを終えたアンナ達は、火星からの帰還者としてマスコミ
に晒される。エイジの処遇については未だ不明のまま、彼らはギルバート博士からエリザベスが国連宇宙局を退
職した事を聞かされた。


基地から立ち去るエリザベスを追いかけ、それぞれに別れの言葉を交わすアンナ達。シモーヌは一人見送りの列
を離れ、火星からの苦楽を共にした姉のような彼女に問い掛ける。『どうして別れた恋人の傍に居たいのか』と。
エリザベスは笑って、気持ちに正直になる事だと告げた。互いの傷が癒えれば、またいつか離れて行くのだとして
も、今は傍に居たいのだと。瞳に迷いを浮かべるシモーヌに『エイジを支えてあげて』と言い残し、エリザベスはクレ
イトンと共に基地を去っていった。


迎えがやって来たアーサーが、一番に帰国する事になった。アーサーはエイジを残して国に帰る事に後ろめたさ
を感じていたが、面会を申し込んでも許可されず、残っていても会えるかどうか判らないのだから気にするなとデ
ビッド達に諭され、ようやく帰途に着く。だが彼は何処に居るか判らないエイジに向かって、きっと戻ってくると叫ん
で車に乗り込んだのだった。

続いてシモーヌの迎えも到着するが、彼女は自分で帰るからと追い返してしまう。『しばらく此処に居たいの』ただ
それだけの理由で、彼女はエドワーズ空軍基地に留まり続ける。エイジを残して帰る事を後ろめたく思うのは、ア
ーサーやシモーヌだけではなかった。『シモーヌはね…エイジの事が、好きなの』自分に言い聞かせるようにアン
ナが呟く。彼女の残る理由が後ろめたさだけではない事に、アンナもデビッド達も気付かざるをえなかった。

軟禁室で、エイジはまんじりともしない時間を過ごしていた。此処は父の故郷。幼い頃から憧れ続けた星。そして
この星を守る為に、自分は反逆者になった。どんな屈辱にも耐えてやると、苛立ちを抑えて決意を新たにするエイ
ジだったが、不意に嫌な予感に襲われる。同じ頃、レイズナーの内部にどんな解析も受け付けない部分がある事
に技術者達は気付いていた。X線でも透過出来ない以上、解体して確かめるしか術は無い。だが解体作業が始
まって間も無く、レイズナーが無人のまま暴走を始めた。

レイズナーが動き出したと言う話を聞いて駆けつけるアンナ達。無人のまま動いている事を知らないシモーヌは警
備兵の手を振り切って駆け寄るが、レイズナーの無差別攻撃に慄然とする。全く歯が立たない基地関係者は、
エイジにレイズナーを止めるように要請。レイズナーの危険性を訴えた自分の警告を無視した軍人たちに苛立ちを
覚えながらも、彼はその要請を受け容れ、レイズナーと対峙した。

『大事な事は結果ではなく、今の気持ちに自分が正直になる事』


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