#21 〜 #25
#21 我が名はフォロン |
レイズナーの中に存在する、もう一つのコンピューターと接触を試みるエイジ。だがレイは応答エラーを繰り返す ばかりで事態は進展しない。同じ頃アンナ達は再び基地の取調室へと集められ、一度は基地を去ったアーサー やエリザベスまで呼び戻されていた。 埒が明かない事に業を煮やしたエイジは、周囲を固めていた警備兵に銃を貸してくれと頼む。拒否する警備兵 を説得し拳銃を手渡したのは、父の親友、ジョン・ギルバートだった。 レイズナーのコックピットに向け銃を構えるエイジ。レイの向こう側で確かにこちらを伺っているもう一つの存在に 向け、脅しではないと警告した上で発砲する。一発、二発と銃弾が撃ち込まれると、ようやく『ソレ』は答えた。 『我が名はフォロン』と――― レイズナーにエイジを搭乗させたのも、フォロンを組み込んだのも、全ては父・ケン・アスカの意思だった。平和 を願う使者として送り出した息子に、グラドス創世の秘密を託したのだ。フォロンは伝承者。それ故に、自らが守 られない、無事では居られないと判断した時には、パイロットの意思を離れて自らを守る事を最優先としたのだ と。グラドス創世の秘密を知ったエイジはその内容に呆然とする。だが我に返った彼は地球全土に向けて、父が 自分に託したメッセージを発した。今の地球の軍事力ではグラドスには敵わない。いたずらに犠牲者を出すより も、今はグラドスに降伏すべきだと……だがそれ以上に大事な理由を口にする前に、エイジは地球人としての誇 りを傷付けられ、激昂した軍人たちの攻撃を受ける。本当に伝えなければならなかったその言葉を伝えられぬま ま、シャトルを奪取し逃亡せざるを得なくなった。 宇宙に逃れたエイジはグレスコに直接通信を繋ぐ。グラドス創世の秘密を公表されたくなければ全軍を退いて 本星に撤退しろと詰め寄るが、レイズナーの元にはブラッディ・カイザルの部隊が接近しつつあった。 『このコックピットは僕の世界だ。なのにお前は僕の意思の外に存在する。 呼び掛けにも応じようとしない。答えろ!答えなければ撃つだけだ!!』 |
#22 フォロンとの対決 |
ブラッディ・カイザルの追撃をV‐MAX機能で振り切ったエイジは、破壊された人工衛星の残骸にレイズナーを潜 ませていた。フォロンはグラドス創生の伝承を守る為、レイズナーを守る事を最優先事項としている。伝承を守る 為にゲイルは殺されたのだ。ならば、彼と同機種のSPTを駆るあのパイロットは何者なのか。ゲイルはあの時死 んでいなかったのか?呼び掛けに応じない敵機のパイロットを思い、エイジは思案に沈む。 いつ始まるかもしれないグラドスの攻撃に備えて、着々と準備が進むエドワーズ空軍基地。浮き足立ったその中 にあって、アンナ達だけは奇妙な落ち着きを保っていた。緊張の連続だった日々を経て、恐怖に対して鈍感に なっていたのだ。案じるのは明日の我が身より、数時間前に飛び出して行ったきりのエイジとレイズナーの事ば かり。彼が無事である事を、アンナもシモーヌも共に願っていた。 エイジとレイズナーを取り逃がしたブラッディ・カイザルを格納庫で出迎えるカルラ。紅いグライム・カイザルのパ イロットは、エイジの姉であるジュリアだった。恋人を奪った弟を討つ事を心の中で両親に詫びるが、例え血を分 けた姉弟でも、ゲイルを殺したエイジを赦す事は出来ない。カルラの前では気丈に振舞っていたジュリアだった が、亡きゲイルを想い、部屋で一人泣き崩れるのだった。 ゲイルを死に至らしめた瞬間を夢に見て、エイジは短い眠りから眼を覚ませた。レイズナーのもう一つの頭脳で あるフォロンは、エイジの指示など無くても伝承を守る事を最優先事項として敵を殲滅出来る。ゲイルの撃破を 『合理的な処理だった』と評したフォロンに、エイジの怒りは頂点に達した。 グラドス創世の秘密とは、先史時代種としての生命力が衰え滅びかかったグラドス人が栄えた文明を維持、継 承させる為、地球から人類の生命核を持ち帰りグラドスにおいて保護、育成した事。即ちグラドスと地球は祖を 同じくする種族だという事実。 人を殺す事を合理的だと言う機体には乗っていられないとコックピットを離れるエイジに、レイズナー=フォロン はレーザードライフルを構える。グラドス創世の秘密を知った彼を生かして離反させる訳にはいかないフォロン に、彼は地球とグラドスの混血である自分こそが伝承の体現者であると叫ぶ。コンピューターであるフォロンに は証が無い。二つの星の混血である自分を認めるのならば、黙って退けと命じるエイジ。認められなければ死 も覚悟する彼の前で、ゆっくりとライフルの銃口が下がる。コックピットから、懐かしいレイの声が響いた。フォロ ンはエイジを伝承の体現者と認め、V‐MAX――緊急発動システム――機能を含めて、レイズナーの全てを彼 の手に託したのだった。 一方、間接的な地球侵攻作戦が芳しくない事で、グレスコは地球のオゾン層破壊を命じる。主要都市上空のオゾ ン層を破壊し、地上の動植物に大打撃を与えるその作戦はかつてネメイン星制圧の際にも使用され、グラドス史 上最大の汚点として歴史に名を留めていた。地球の衛星軌道上にオゾン層破壊用の軍事衛星が配置された事 を知ったエイジは、レイズナーを駆る。V‐MAXの発動により一基の衛星を完全破壊する事に成功するが、自分 の手に託されたその力の大きさと責任の重さを、エイジは改めて思いやらずにはいられなかった。 再び襲ってくる紅いグライム・カイザル。そのパイロットが姉のジュリアである事を、ようやくエイジは知った。 恋人・ゲイルの仇を討つ為に銃を向ける姉に、彼を討ったのは自分の意思ではなかったと訴えるエイジ。グラド スと地球が同じ人種である事、自分たち姉弟がその証だと必死に伝えるが、ジュリアは聞く耳を持たなかった。 グラドス軍による地球攻撃が本格化する中、レイズナーはブラッディ・カイザルの追撃から逃れる為に地球の大 気圏へと突入する。 『伝承の体現者はこの僕だ!グラドス人と地球人の混血が、何よりの証明だ!!』 |
#23 奇跡を求めて |
大気圏突入後も、執拗にレイズナーを追うブラッディ・カイザル。ゲイルを討ったのは自分ではなく、レイズナー のもう一つのコンピューターだとエイジは今一度訴えるが、ジュリアは攻撃の手を緩めない。反撃を促すレイに、 エイジは出来ないと叫ぶ。この美しい星は守られるべきだという、ゲイルの最期の言葉を伝えるが、悲しみに心 を閉ざした姉の心には届かなかった。もみ合う二機目掛けて、雨のようなレーザーが撃ち込まれる。V‐MAXを発 動させたレイズナーは辛くも窮地を脱するが、制御を喪ったブラッディ・カイザルは青い海へと沈んでいった。 海底で目覚めたジュリアの眼に飛び込んできたのは、視界いっぱいに広がる青い海と、そこに息づく魚たちの姿 だった。初めて目にする地球の命の源に心を奪われるジュリア。エイジは通信機を介して、ゲイルの最期の言葉 を姉に伝える。今は亡き恋人の心に触れた彼女の面には、ただ穏やかな微笑が浮かんでいた。 地上でアンナ達がエイジの安否を気遣う中、遂にグラドスのオゾン層破壊攻撃が始まる。海中に姿を消した姉を 探すエイジも、天を貫く妖しい光に本格的な地球侵攻が始まった事を知った。有史以来初めて地球が一つとなり 東西が手を合わせてグラドスに挑むが、核兵器さえ通用しなかった。もやは万策は尽きた米国大統領は、火星 から生還した子供たちとシャトルに、地球の命運を委ねる決意をした。奇跡を起こした彼らに、もう一度奇跡を起 こして欲しいと――― 仲間であったエイジは、今この場に居ない。だが彼が命を賭けて果たそうとした志を無にしない為に、デビッド達 は再び宇宙へと出る決心をする。シャトルに乗り込むアンナの手には、一輪の花が握られていた。 離陸したシャトルからエイジに呼びかけるが、応答は無い。やはり駄目かと皆が肩を落とす中、アメリカ、ソ連、 イギリス、カナダ、ドイツ、フランス、スイス、中国等、世界中の空軍機がシャトルの護衛に駆け付ける。人類は きっと大丈夫―――希望の光を見出した子供達の下に通信が入る。 『デビッド、ロアン、聞こえるか?シモーヌ、アンナ、アーサー…みんなシャトルに居るのか?ドクターもか?』 エイジの声に歓喜に湧くデビッド達。護衛機の合間を縫うようにレイズナーが近付いてくる。火星から生死を共に した仲間たちは、地球の命運を賭けて再び集った。 『俺は行くよ、エイジの志を無にしない為に。そして俺たちの未来の為に』 |
#24 光になったエイジ |
シャトルに合流したエイジとレイズナー。デビッド達は死を覚悟しながらも、万に一つの可能性に賭けてエイジと 共にグラドスに挑む事を自ら選んだ。シャトルを守る護衛機のパイロット達も、国や人種を超え、一人の人間とし て互いに友情を結ぶ。グラドスの脅威を前に一つとなった地球の人達の姿を目の当たりにして、グラドス創世の 謎を説く事さえ出来れば、地球とグラドスも互いに判り合える筈だと確信を深める。しばしの友誼を交わした子供 達と各国の軍人たちだったが、シャトルを少しでもグラドスの本隊に近付ける為に、彼らは敢えて盾となって散っ て行くのだった。 盾となってくれた軍人たちの行為を無駄にしない為に、出撃準備に入るエイジ達。だが、犬死には止めてと言う シモーヌの悲痛な叫びが彼らを引き止める。グラドスに狙われるほど地球が歪んだ形で宇宙進出を果たしてし まった責任を、どうしてエイジ達が取らなければならないのかと。沈黙するエイジの代わりに、突然デビッドがシ モーヌに口付ける。彼女に秘めた想いを告げ、例え奇跡が起こせなくても同じ空で死ねるなら本望だと言い残し てSPT搭乗口に姿を消したデビッドに、彼女は何も答える事が出来なかった。 デビッド、ロアンが次々にSPT搭乗口に姿を消し、アーサーの『きっとまた七人の仲間で会うんだ』という言葉を胸 に、最後にエイジが動く。その彼の背をアンナが呼び止めた。彼女は小さな花を一輪差し出すと、『きっと帰って 来てください』と告げる。その花を手に、エイジはレイズナーへと搭乗した。 シャトルに群がるグラドスのSPT。デビッドとロアンも善戦するが、戦力の差は圧倒的だった。第一波は凌ぎきっ たが、ロアンの搭乗するバルディは左腕を喪い、ベイブルに搭乗するデビッドも疲弊していた。二人とシャトルを 守りながらでは第二波は防げない。エイジは二人にシャトルに戻るように言うと、一人レイズナーを駆ってグレス コの母艦へと突入する。 V‐MAXを発動し、蒼く輝く流星となったレイズナー。固唾を呑んで見守るアンナに、エイジは穏やかな声で彼女 の渡してくれた花の名を尋ねる。愛する男性の帰りを待ち続けて白い花へと姿を変えた女性の物語と共に、アン ナは『雛菊』と言う名を彼に伝えた。 『行くぞレイ、地球を守る僕の戦いはこれから始まるんだ!死にはしない。このまま死んでたまるか!!』 漆黒の宇宙を閃光が染める。 エイジとレイズナーは、光の中に消えた…… 『きっと帰って来てください。地球には、こんな花がたくさんあるんです』 |
#25 駆けぬけた宇宙(そら) |
エイジとアンナ達の出会いから、主に火星脱出までの総集編です。 |