#31 〜 #35
#31 仕組まれた聖戦 |
日々グラドスタワーの前で祈りを捧げるジュリアと聖女隊の女性たち。いつものようにジュリアはグレスコに 謁見を申し入れていたが、初めてその機会を得る事になった。一兵士であったその身に何が起きたのかと 問うグレスコに、『陽の光と風の音に心を開け』とジュリアは微笑んだ。 地球上での最高権力者であるグレスコに、グラドスと地球とが互いに手を携えるように命じてくれと訴える ジュリア。グレスコも僅かに心を動かされたかに見えたが、そこにル・カインが介入する。地球は全ての面 でグラドスに劣ると言う彼に、ジュリアは内に秘めた物はどちらも同じだと返す。ならばその地球人の秘め た力を見せてみろと、ル・カインは詰め寄った。あくまでも地球人自身が、地球製の武器で捕虜となった彼 女を助ける為にグラドスの戦士と戦え―――と。名乗りが有った場合、レジスタンスの戦力を推し量る事が 出来る。名乗り出る者が無かった場合、聖女は処刑される。ル・カインにとっては、どちらに転んでも好都 合な賭けだった。 デビッドは開発途中の地球製SPTの地下工場へ案内してくれと懇願するが、エイジは秘密の漏洩を防ぐ為 にも教えられないと首を振り続ける。だが地球人としての誇りを問われ、クスコの聖女の危機を黙って見過 ごす事は出来ないと重ねて訴え、ようやく案内して貰う。地下工場で開発に携わっていたエリザベスとも再 会し、聖女の救出はエイジに任せておけと釘を刺されるが、デビッドは一瞬の隙を突いてエイジを殴り倒す と、シモーヌを連れて地球製SPTを持ち出した。 グラドス代表のゴステロを相手にデビッドは善戦するが、未完成でキャノピーが開放されたままであった為 に外部から狙撃され、機体から放り出されてしまう。代わってシモーヌが搭乗するが彼女も狙撃を受け、機 体も破壊されてしまった。だが遅れて駆けつけたエイジが、第三者にデビッド達を狙撃させたゴステロの不 正を暴き、ル・カインは激怒する。 グラドス人の面汚しとなったゴステロを自らの手で処刑しようとするが、その銃口の前にジュリアが立ち塞 がった。幾度も自分を殺そうとした男が憎くは無いのかと問われ、彼女はただ哀れなだけだと答える。 静かな彼女の眼差しに銃を下ろしたル・カインは、彼女もエイジもデビッド達も捨て置いてその場を立ち去っ たのだった。 『この世で取り戻せぬものは人の命のみだ。早まるな!』 |
#32 ああ、ゴステロ |
ル・カインの不興を買い、投獄されるゴステロ。プライドに傷をつけてしまった自分を、ル・カインは決してし はしない。ゴステロは隙を見て看守を殺害すると、鍵を奪って逃亡する。その際、彼はジュリアを拉致して いった。 その頃ル・カインは、ゴステロの命乞いをしたジュリアの事を思い返していた。何故自分の命を奪おうとした 男の命を庇うのか。彼女の穏やかでありながら真っ直ぐに自分を見る瞳がどうしても頭から離れない。その 理由に気付けぬまま苛立ちを募らせていたが、ゴステロの脱走を知り死鬼隊を追討に送り出した。 ゴステロ機の居所を探し出したエイジはレイズナーで駆け付けるが、ゴステロが機体の外にジュリアを拘束 した為に思うように戦えない。死鬼隊もその場にやって来るが、次に倒すべき敵であるレイズナーの戦闘デ ータを取る為に傍観を決め込んだ。腕を傷めていたゴステロの隙を突き、V‐MAXを発動させてジュリアの救 出に成功すると、レイズナーはその場を飛び去って行った。 『レイズナーにあのV‐MAXが有る限り、三人束になっても奴には敵わない』 レイズナーを封じるには、まずV‐MAXを封じる事。 撃ち倒されたゴステロの機体に、残った三人の死鬼隊が止めをさす。衝撃でコックピットの外に弾き出され ていたゴステロは、這うようにしてその場を逃げ出した。 『何故あんな女の事がこうも気になるのだ?』 |
#33 死機隊の挑戦 |
ル・カインからレイズナー抹殺の命を受けた死鬼隊の三人は、先のゴステロとの戦闘データを下に作戦を 立てる。V‐MAX発動時のレイズナーの動きは、単純比較で通常の四倍強。一対一で当たっては勝機は無 い。V‐MAX封じの作戦が立てられている中、辛うじて撃破された機体から脱出したゴステロは、時計技師の 工房に押し入り壊れた腕の修理をさせていた。 クスコの聖女救出の際にレジスタンスの戦力をほぼ読んだル・カインは、ロアンに命じてニューヨークから 半径千キロ以内のかつての核シェルターの場所を特定させる。そこが地下組織の拠点だと踏んだのだ。 赤外線レーダー、磁気センサーの探査データと、ロアンの纏めた核シェルターのデータを解析する事で、 地下組織の場所が判明する。 一方ル・カインの前に未だ未熟な戦力を曝け出してしまった地下組織は、地球製SPTの完成を前に拠点の 移動を余儀なくされていた。完全に撤退を終える直前、死鬼隊が地下工場を強襲する。辛うじて仲間たちを 逃がす事は出来たが、閉鎖空間の中で浮遊機雷を大量に撒かれたレイズナーは、火気を使えず三対一 で戦う事になった。だがそこに、エイジを殺す事に妄執するゴステロが密かに紛れ込む。ゴステロに気付い た死鬼隊の一人、ゲティがフォーメーションを乱して暴走。レイズナーは辛くも危機を脱するが、ゴステロは ゲティのSPTに踏み潰され、ICチップの塊と化した。 『皮肉なものだ。奴にもお前ほどの智恵があれば』 |
#34 狙われたアンナ |
レジスタンスのシンボル的存在になりつつあるアンナにル・カインが目をつけた。このままでは第二のクスコ の聖女を産む事にもなりかねない。エイジの保護があれば身の安全を図れるという思い上がりを正す為に も、ル・カインは死鬼隊を差し向け、みせしめとして彼女を始末する事を文化矯正隊の長であるギウラに命 じた。 アンナの所在を突き止める為、文化矯正隊が大規模なレジスタンス狩りを始めた。マッシュの連絡を受けた アンナは辛うじて捕縛を逃れるが、組織の仲間が捕らえられ、薬を使われて潜伏先が知られてしまう。 エイジとデビッドは情報を聞く前に車で彼女の潜伏先へと向かっていたが、危機を報せる為にシモーヌもバ イクで後を追った。 マッシュとガウと共に人気の無い町の廃屋に身を潜めていたアンナを、死鬼隊のマンジェロとボーンが捕捉 していた。二人はSPTを降り、廃屋の中へと潜り込む。侵入者の気配に気付いたアンナ達は必死に逃げ惑 うが、徐々に追い詰められていく。だが間一髪でシモーヌ達が駆けつけ、危機を逃れた。死鬼隊の二人は SPTを駆って同じく駆けつけたエイジを始末しようとするが、同士討ちの隙を突かれてボーンが撃破され、 マンジェロは重傷を負って離脱していった。 『その追憶は教えてくれた。忘れ得ぬ人こそ、誰よりも愛しい人と』 |
#35 グラドスの刻印 |
エイジはグラドスの刻印の秘密を追って南米のクスコを目指していた。グラドスの秘密部隊がクスコで密か に発掘作業をしているという情報が入ったのだ。出発の際に襲撃に巻き込まれたアンナも行動を共にし、南 米のジャングルを歩む事三日、ようやく発掘現場に辿り着く。予想以上に厳しい警備にアンナをジャングル に残し、エイジは一人で発掘現場に潜り込んだ。 作業人員に紛れ込み、発掘の様子を見るエイジ。だが隠れていた筈のアンナが警備兵に見付かり、現場指 揮を取っていたカルラが彼女の素性に気付く。エイジはアンナを助け出して逃げるが、追手のカルラと共に、 誤って遺跡の地下へと転落してしまった。 遺跡の地下は、様々な罠が張り巡らされていた。カルラの襲撃と幾重にも連なる罠を辛くも逃れ、エイジ達 はジュリアの持つペンダントの意匠と同じ紋章の刻まれた遺跡へと辿り着く。だがその遺跡はゆっくりと沈降 を続け、間も無く溶岩の海へ沈もうとしていた。床を支えるレイズナーを遠隔操作していたコンピューターを 破壊されたエイジは、床を爆破して直接レイズナーに飛び移ろうとする。そのエイジにカルラは斧を振り上げ たが、彼女を止めたのはアンナの撃った銃弾だった。狙いの定まらない銃口にカルラは冷笑を浮かべるが、 次の銃弾はその顔を掠めた。エイジを守る為なら撃てると叫ぶアンナ。同時に床が爆破され、レイズナーに 乗り移ったエイジが落下する床を地上まで押し上げた。三年間ずっと胸に秘め続けた想いは爆音にかき消 されたが、アンナは彼と共にある幸せを感じずには居られなかった。 『どうして私が撃てないと思うの?私は撃てる。貴女を撃つ事なんか…何ともない!』 |