#6 〜 #10
#6 とり残されて |
焦土と化した米軍基地を目にして、呆然とする子供達とエリザベス達。そこにロベリアが迫る。何とか引き離さなければと 焦るエイジ。だが掃討を命じられた標的の中に子供の姿がある事に気付き、ロベリアは狼狽する。無抵抗の人間を攻撃 する事を恥と思わないのかというエイジの言葉に、彼は明らかに動揺する。エイジの言葉でゴステロの部下殺しを知った ロベリアは、真実を確かめる為に銃を退く。更にゴステロが無線を封鎖した事により、彼の上官に対する疑念は決定的と なった。アンナ達から敵を遠ざける為と、エネルギー補充の為に火星を離脱するレイズナー。衛星フォボスに隠したシャ トルを目指す。ロベリアは彼を弾劾し軍法会議の場に引きずり出す事を誓う。 一方アンナ達は、廃墟となった米軍基地に歩いて向かっていた。生存者が居るかもしれないと考えた彼らは、地下の核 シェルターを目指す。だがそこで彼らを待ち受けていたのは、我先にとシェルターに殺到した挙句、同士討ちで全滅した 軍人たちの亡骸だった。守ってくれる筈のシェルターが仇になった事に子供達は絶望を深める。 ロベリアは本当にガステンを殺していないのかと今一度エイジに問う。『僕は手を下していない』という言葉に彼の真実を 知るが、直後にゴステロの手により撃たれてしまう。 残るエネルギーを使いきり、反撃も出来なくなったレイズナー。だがエイジの窮地を救ったのは、上官としてのゴステロを 見限ったロベリアだった。エイジにも法廷の場で裁かれる道を諭したが、ゴステロに背後から撃破される。その隙にシャ トルに戻り、エネルギーの切れたレイズナーからバルディに乗り換えたエイジの攻撃によってゴステロは機体を喪い、 緊急脱出した。 廃墟となった基地を前に、成す術無く座り込むエリザベスと子供達。だがそんな中で、アンナに続きロアンも、エイジの 事を信じる意思を明らかにする。赤い空に現れたシャトルに子供たちは身を竦ませるが、それはエイジの乗ったシャトル だった。 『我先に殺到した挙句、同士討ちか…!?』 |
#7 血はあかかった |
フォボスに隠してあったシャトルで火星へと戻って来たエイジ。誰もが必要以上にはしゃぎ、彼の元へと駆け寄る。『あの 人はやっぱり私達を見捨てなかった』―――絶望の中に、アンナ達は再び希望を見出した。だがデビッドだけは、彼の事 を人殺しの仲間だと糾弾する。その言葉にハッと目を瞠るエイジ。だがエリザベスはこれ以上の犠牲を出さない為に、 希望の光であるエイジを不必要に責める言動を諌めた。 宇宙では着々とグラドス軍の計画通り地球侵攻作戦が進んでいた。火星上の米ソの基地は相互に核ミサイルを撃ち合っ て自滅。本隊の二時間後の月侵攻が決定する。部下と機体を喪い失態の続いたゴステロに代わり、再びゲイルが召還 された。ゴステロはエイジを人殺しだと罵るが、ゲイルはエイジに人は殺せないと断言する。本隊が月へと侵攻を開始す るのと同時に、ゲイル隊は火星へと降下。だがエイジの口から部下殺しの発覚を恐れたゴステロは、ゲイルの部下を殺し てSPTへと乗り込んだ。 エイジのシャトルで月か地球に辿り着く道を模索するエリザベスと子供達。しかし火星離脱の際にほとんどの燃料を使い 切ってしまう為、いずれにも辿り着けない事が判明する。シャトルを捨てSPTで月面に降りる事も出来たが、SPTは三機し かない為に、四人は火星を脱出出来ない事になる。重い沈黙がシャトルの中を包み込んだ。ソ連軍基地も米軍基地同様 に壊滅している事を確かめると、シャトルは水と酸素を確保出来る無人観測基地へと戻って来た。 火星の異常を察知した月面基地からの援軍と、各基地を訪れる定期輸送船に可能性を見出そうとするエリザベス。だが いつやって来るかも知れない輸送船を当てには出来ないと焦るエイジ。こうしている間にもグラドスの侵攻は進んでいる と口にした彼にデビッドが叫んだ。『好きな二人を連れて、とっとと出て行け!』と。これ以上恩を着せられたら、その重み に押し潰されそうだと吐露する。かつて『グラドス人は喧嘩をしないのか』と尋ねたシモーヌに、エイジは自分にも感情は あると呟き、デビッドの放った拳を避けて逆に殴りつけた。遂に双方殴り合う二人。地球は幼い頃からの夢だったと言うエ イジ。切れた彼の口元から流れ出た赤い血を目にして、デビッド達は思わず目を瞠った。『もう止めて!』と叫んだアンナ の声に、二人は手を止める。エイジのヘルメットが、ゲイル隊の接近を報せるアラートを発していた。 『グラドス人だって殴られれば痛い。腹だって立つ。僕だって人間なんだ!!』 |
#8 彼の叫びにこたえて |
再び対峙するゲイルとエイジ。このままではエイジを特別軍事法反逆罪でこの場で処刑しなくてはならなくなる。姉を悲し ませるなと説得するが、やはり彼は応じない。ゴステロの部下を殺めた事に話が及ぶと、エイジは二人には手を下してい ないと否定。部下殺しが発覚すれば破滅するしかないゴステロは、ゲイルを背後から不意打ちした。宇宙服に損傷は無い ものの、一時的に身体を動かせなくなったゲイルはゴステロの格好の的になってしまう。エイジはアンナ達だけではなく、 彼をも守らなくてはならなくなった。 無人観測基地では、辛うじて音声だけは傍受されていた。そして通信からゲイルがエイジの先輩である事を知る。ゴステ ロがゲイルを狙っている事に気付く子供達。アンナはエイジに教えてあげてと訴えるが、かつてゲイルに攻撃された事か ら咄嗟に誰も動く事が出来なかった。間一髪でゴステロの思惑に気付いたエイジが襲撃を阻止。だが身動きが取れず 不利になっていく状況の中、エイジは必死にアンナ達にゲイルを守ってくれと叫ぶ。何でそんな事をと、デビッド達が反発 する中、シモーヌが名乗りをあげる。だがカンフル剤を手に飛び出していったのは、他ならないデビッドであった。 ゲイルとデビッドを守りながら戦うエイジ。だが人を殺せない彼には、先制攻撃を促し、コックピットを狙えと指示するレイ の声に反応出来ない。近付くゴステロ機。動けないレイズナー。だがその時、エイジの意志に反してレイズナーがゴステロ 機のコックピットに向け、レーザードガンを放った。 ゴステロ機は大破。ゲイルは意識を取り戻し離脱したが、コックピットの中でエイジは呆然としていた。 『危機回避、マニュアル照準によりターゲット撃破、生命反応停止』 ―――虚ろに繰り返されるレイの声。エイジは新たな十字架を背負う。 『それでも助けて欲しい。 お願いだ!皆にとって敵かもしれないけど、僕には大切な人なんだ!!』 |
#9 生きる道を求めて |
負傷したゲイルに代わり、彼の部下であるカルラがエイジ追討に名乗りを挙げる。今までの空戦を想定したSPTだけでは なく、地上用SPTを駆使し、相手の集中力の分散とレーダーの感知角度の死角を突くという彼女の提示した作戦に、出撃 の許可を与えながらも油断の出来ない策士である事を見抜く。立場上言葉には出来なかったが、ゲイルは内心でエイジ の身を案じていた。 シャトルの外で一人思い悩むエイジ。自分には地球人の血が流れているから、ゴステロを殺す事が出来たのだろうか? 思いつめたその後姿を見遣ったエリザベスは、彼一人に全てを託す事に限界を感じ、ある選択をする。それは自分も含め た子供たちも、SPTの操縦を習得すると言うものだった。エイジにもしもの事があった時にも、確実に生き延びる為に。 それがエイジではなく、エリザベス自身の考えだと確かめた上で、デビッドはその提案を受け容れる。他の子供たちもま た、生きる為に頷いたのだった。 以前のレイズナーの戦闘データを元に、シュミレーションで戦闘訓練をする子供たち。自分が撃ったゴステロのSPTを再び 目にして、エイジの表情が曇る。だが目を逸らす間も無く、敵接近のアラートが鳴り響いた。 トライ・ポッド・キャリアと呼ばれるグラドスのシャトルに搭載されるSPTは通常三機。従って三機で編隊を組まれる事が必 然的に多くなるにも関わらず、敵シャトルから離脱した機影が一機である事をエイジは訝しむ。子供たちの居る無人観測 基地に敵を近付けさせない為にレイズナーは迎撃に飛び立ったが、空中戦を得意とするカルラのSPTに苦戦。地上戦に 持ち込む為に地上に降りるが、そこには二機の地上用SPTが潜んでいた。 無人観測基地に迫る敵SPT。状況不利と分析したレイはレーザードガンの照準を急所に変更を勧告。だがエイジは頑なに 急所は外せと命令する。モニターで上手く外の状況を探知出来ず、焦りを憶えたデビッドは自らの目で確かめるべく飛び 出していく。その後をロアンも追った。 急所を外しながらも、何とか敵の一機の動きを止めるレイズナー。だが繰り返し敵機の撃破を要請し続けるレイの声に耐 え切れなくなったエイジは、遂にライフルを投げ捨ててしまう。ナックルだけで応戦するレイズナー、だが次第に追い詰め られていくその姿を見て、デビッド達はシャトルに残されたSPTへと走る。不慣れな操縦ながらもデビッドはレイズナーの窮 地を救い、ロアンはシャトルと無人観測基地を守りきるのだった。 『もう嫌だ!人を殺したくない!!』 |
#10 エイジ!?と呼んだ |
デビッド、ロアンの加勢で、カルラ隊を辛くも退けたエイジ。何故武器を捨てたんだと言う問いかけに答えられず、彼は沈黙 してしまう。その沈黙は彼の苦悩の深さを物語っていた。エリザベスがエイジと共に今までの経緯を報告書に纏める間に、 デビッドとロアン、アーサーは新たな敵の襲撃に備えてシュミレーションに取り組み、アンナとシモーヌは非常食料やレトル ト食材を使って、温かな食事の支度を始める。 シュミレーションを繰り返していたデビッドとロアンは、今までの戦闘データからエイジが故意に照準を急所から外していた 事に気付く。相手を撃破しなかったにも関わらず、今まで生き延びてきた彼の強運に二人は驚きつつも、先の戦闘で何故 エイジが自ら武器を投げ捨てたのかを悟った。 乏しい材料からシチューを作るアンナとシモーヌ。その傍らで、アンナはシモーヌに『此処に居る男子で誰が好き?』と尋ね られる。思わず答えに窮するアンナ。逆にシモーヌに同じ問い掛けをするが、彼女の口からエイジの名が出なかった事を 指摘した事で、自覚していなかった彼への淡い想いに気付かされる。気まずくなってしまった空気を和ませるかのように、 宇宙服を脱いで身軽に飛び跳ねるシモーヌ。彼女の明るい笑顔に、アンナの面にも微笑が浮かぶ。二人はシュミレーショ ンから戻って来たデビッドたちにも、宇宙服を脱いで『正装』しろと笑いかけた。今だけでも、明日をもしれない恐怖を忘れて 楽しい時間を過ごせるように。 報告書の作成を一時中断して、皆の所に戻って来たエリザベスとエイジ。そこで二人は宇宙服を脱ぎ捨てた私服姿のアン ナ達に出迎えらる。『お前も脱げよ!』エイジを押さえつけ、宇宙服を脱がしに掛かる子供達。彼らは当たり前のようにエイ ジの名を口にし、かつてあれ程彼を憎んでいたデビッドの顔にさえ笑顔が溢れる。温かな食事と和やかな話題、そこでアン ンナは初めてエイジの笑顔を目にしたのだった。 穏やかな時間は、襲によって現実へと引き戻される。デビッドとロアンは、再びエイジと共に戦場に出る決意を表した。 だがデビッド達の戦場経験の未熟さを逆手に取ったカルラの策に苦戦する。だがエイジ達にも、シャトルにも危機が迫った その時、突如カルラ隊に撤退命令が下る。地球の艦が、火星へと接近していたのだった。 『アンナは彼の事、気になるの?』 |