廻 想


        冷たい風が吹く葵屋の門前に立ち、操は首を伸ばして通りを眺めていた。
        陽は出ているが、風が冷たいのであまり暖かいとは思わない。
        以前は背中に長く伸ばした髪があったので、例え髪を三つ編みに束ねていてもそれなりに温かかったのだが、
        今、操の髪は顔の輪郭を縁取る程の長さしかない。
        つい先日、思う所あってばっさり切り落としてしまったのだ。
        時折強く吹く風に髪が洗われて襟足の寒い思いはするが、防寒の役には立っていなかった。

 

        台所で夕飯の仕度を手伝っていた操は、朝から外出していた蒼紫が戻ってくるような気がしてふと手を止めた。
        普段は表にまで出る事はあまりないのだが、何故かその日は外に出る気になった。 
        蒼紫の部屋の火鉢の炭に火をつけてから、表に出る。   
        まだ陽は落ちていないが、西の稜線は薄っすらと暮色に染まりつつあった。

        『もうそろそろだと思うんだけど』

        こと蒼紫の帰還に関しての自分の勘は、百発百中と言っても良い。 
        例え蒼紫が夜明け前に戻ってこようが、深夜に帰ってこようが、不思議と操には『もうすぐだ』と判るのである。   
        始めは偶然か気のせいかと思っていたこの勘も、続けて当れば信憑性も出てくる。
        何らかの理屈をつけてみようかとも思ったが、無駄な努力だと思い当たり、あっさり諦めた。
        勘は勘。確かに外した事がないのは我ながら凄いと思うが、それ以上でも以下でもない。
        それならば深く考えず、折角授かった勘を素直に認めてしまおうと腹を括った。

        暮れかけた道を歩く人々の足は心なしか普段よりも速い。
        口元を覆うように翳した掌に息を吹きかけ、もう一度顔を上げた時―――遠くにぽつりと滲むような人影を見付けた。
        高い背と、胸元で前を押さえられた風に翻る白外套。どんなに遠くたって見間違えたりしない。

        『やっぱり、戻ってきた』

        自分の勘の確かさに思わず笑みを浮かべて、操は自分から蒼紫の戻ってくる方向へと足を向けた。
        京都の町を仕切る碁盤目状の辻をひとつ分、ゆっくりと歩く。
        蒼紫も操の姿に気付き、微かに手を挙げて合図をした―――その時だった。

        わあっ……というざわめきと悲鳴が、横合いから聞こえた。
        操からは右手側、何事かと目を凝らすと、道行く人々が割れるように左右に避けて行くその中を一頭の馬が駆け抜けてくる。
        しかもその首には、子供がしがみ付いていた。

        ―――暴れ馬……!子供が遊んでいて、暴走したの!?

        操は一瞬だけ、道遥か向こうの蒼紫を見た。蒼紫も騒ぎの起きている方から、自分を見た。
        蒼紫は小さく頷くと地を蹴り、物凄い速さで近付いて来る馬に向かって駆け出す。
        操も迷わず、同じ方向へと駆け出した。

        蒼紫は馬を止める気に違いない。
        我を忘れて暴走する暴れ馬の背に飛び乗り手綱を引くなど、
        今この場には、御庭番衆として鍛錬を積んだ自分達以外に居なかった。
        彼が馬を止めるのなら、自分に出来る事は万が一の時の援護だ。暴れる馬に近付き過ぎず、不測の事態に備える事―――

        道筋に並ぶ店の屋根に飛び上がると、そのまま蒼紫は馬に対して並走した。
        タイミングを見計らい、鞍のついていない馬の背へと飛び移る。
        突然背に加わった重さと衝撃、そして手綱を引かれた事で馬は高らかに前足を上げた。
        その刹那―――暴れる馬の背から振り落とされないように懸命にしがみ付いていた子供の腕が、
        不意に力を失い宙に投げ出された。

        「危ない!!」

        その声が自分だったのか、蒼紫だったのか、それとも全く違う誰かのものだったのか。
        それすら判らないまま、操は身体を投げ出すように地を蹴った。
        地に堕ちようとしていた子供を受け止め、地面を転がる。
        だが、ほっと息をつく暇も無く―――

        「操!!」

        最後に聞いたのは、自分の名を呼ぶ蒼紫の声―――いや、叫びだった。
        振り向く事すら出来ず、頭に強い衝撃を受けた操は、そのまま意識を喪った。

 

        「恵先生、お客様がいらしてます」
        「お客様?患者さんじゃなくて?」

        恵の診療所を手伝ってくれている医者仲間の娘が、診察室の恵に来客を告げる。
        丁度患者が切れた所で、薬品棚の整理をしていた恵が訝しげな顔をした。
        剣心や薫は会津まで自分を訪ねてくれた事があるから、彼らなら曖昧に取り次がず名を告げるだろう。

        「どなた?」
        「それが、『葵屋』の白尉だと言えば判っていただけるとおっしゃってるんですが」

        藪から棒な名に、思わず手にした薬瓶を落としそうになる。
        前にもこんな事があったなと思いながらも、恵は慌てて診療室を出た。
        京都で散々剣心たちが世話になった『葵屋』の白―――京都御庭番衆の白尉が、
        通された来客用の小さな座敷で旅装束姿のままペコリと頭を下げる。

        「……一体どうしたの?こんな会津くんだりまで貴方が来るなんて」
        「すみません。お手紙を差し上げてからくるのが本当は筋なんですが、
         どうしても貴女を京都まで連れて来いと、翁に申し付けられまして」

        すうっと恵の切れ長の瞳が眇められる。

        「つまり、私を引っ張って行かなくちゃならない程、ロクでもない事態に葵屋は陥ってるわけね」

        コクン、と白は顎を引いて頷いた。
        ふう、と恵が頭の痛そうな顔をする。大体白の表情で判るが、相当に患者は重傷に違いない。

        「以前、操ちゃんが倒れた時でさえ、御頭さんがまず手紙を寄越してきたわよ?結局、私も飛んで行ったけど。
         なのにこちらの事情はとりあえず脇に置いておいて、とにかく来てくれなんて……今度は一体何があったというの?」

        もしや、その蒼紫の身に何かあったのだろうか。だとすれば、操が自らここにやって来そうなものだが。

        「数日前、お嬢が京都で暴れ馬の蹄にかかりました」

        一瞬、恵が息を呑む。

        「……容態は?」
        「怪我は、大した事ありませんでした」

        だが白の顔は、『とても大した事はない』ようには見えない。恵の表情が自然と強張る。

        「頭に怪我をしましたが、翌朝には目を覚ましたんです。ですが……」
        「……ですが?」

        白は一度、言葉を切った。思いが喉につかえて、言葉にならないかのように。

        「目を覚ましたお嬢は……何一つ覚えていませんでした。自分の、名前すら―――」

        恵は、大きな氷の塊を飲み込んだような気分になった。

 

 

        「頭を、強く打ったのだと思う」

        恵と差し向かいに座った蒼紫は、とにかく詳しい事情を話してくれと請われて、そう口にした。
        通された客間には、他にも翁が同席している。

        翌日の夕刻には、恵は京都の葵屋に居た。
        診療所は医者仲間に任せ、事が事だけにしばらく戻れないかもしれないと言い置いてある。
        何処かの体力馬鹿とは違い、まさか会津から走って来る訳にも行かず、陸蒸気と馬車をフル活用した結果だ。
        迎えに来た白にはほとんど休む間もない強行軍だったが、彼は一言も不平を口にする事無く、無事恵を葵屋に連れ帰った。
        今は自室で休んでいる筈である。

        「馬から振り落とされた子供を受け止めた時には、確かに受身を取っていた筈だ。
         だがその直後、御しきれなかった馬の蹄が操を蹴った」

        子供が振り落とされそうになった時、咄嗟に蒼紫も手を伸ばそうとしたのだ。
        だが鞍のついていない馬には鐙(あぶみ)も無く、足で身体を支えられない以上、
        片手の手綱だけでは自分まで振り落とされかねなかった。
        手綱を力いっぱい引き、馬の脚を止めさせる。
        だが、高らかに上げられた蹄のその下には、振り落とされた子供を受け止めた操が居たのだ―――

        「俺の責任だ……子供が振り落とされたのも、操に怪我をさせたのも」

        ぎり、と膝の上に置かれた蒼紫の拳が握り締められる。
        自分の一瞬の判断の誤りが、取り返しのつかない事態を招いた。
        悔やんでも悔やみきれないが、せめてもの救いは子供に怪我がなかった事だろう。

        「子供は無事だったのね?」

        伺うような恵の言葉に、蒼紫と恵の間に斜交いに座った翁が頷く。

        「自分の親の売り物だった馬で遊んでおったそうじゃが、たまたま気性の荒い馬だったんじゃな。
         馬上に上がった際にうっかり腹を蹴ってしまい、そのまま暴走してしまったんじゃ。
         びっくりして大泣きしておったが、怪我はひとつもしとらんかったよ……上手く操が受け止めたお陰でな」

 

        葵屋のすぐ傍での出来事だったので、すぐに表の騒ぎに気付いて翁達も駆けつけた。
        彼らが目にしたのは大声で泣く子供と、額から頬を血に染め、抱き起こした蒼紫の腕の中でぐったりとした操の姿―――
        一瞬ヒヤリとしたが、実際には操は僅かにこめかみのあたりを切ったくらいで、
        治ってしまえば痕も残らないような怪我だったのだ。
        少なくとも、彼女が目を覚ますまではそう思っていた。

 

        「……で、操ちゃんは、今どんな状態?」

        蒼紫は、微かに首を横に振った。滅多な事では感情を表に出さない彼が、
        一瞬でも苦しそうだと感じたのは自分の気のせいなのだろうか。
        どういう事かと眉をひそめた恵を、翁が制する。

        「百聞は一見に如かず……恵殿がご自分の目で確かめた方がいいじゃろう」

 

 

        「こんにちは」

        一年ぶりくらいで顔を合わせた操は、床に起き上がった姿勢のままで部屋に入って来た恵に小さく会釈した。
        だがそれは久し振りに出会った知人にではなく、初対面の相手にする儀礼だと判る。

        「操…ちゃん?私の事、覚えていないかしら。高荷恵よ」
        「高荷……恵さん……?」

        操が頬に手を当て、考え込む。
        何やら受ける雰囲気が違うと思ったら、彼女の髪がすっかり短くなっている事に、この時気が付いた。
        以前あった溌剌とした雰囲気がすっぽりと抜け落ち、今は何となくよく似た他人を見ているような気分がする。

        「ごめんなさい…私、何だか事故に遭ってからいろんな事が思い出せなくて。
         やっと自分の名前とか、少しずつ思い出しはしてるのだけど」

        申し訳なさそうに、操が小さく首を振る。恵の名に聞き覚えはあるような気がするのだが、はっきりとは判らないらしい。

        「無理はしないで。焦らなくても、ゆっくり思い出していけばいいのだから。
         私は医者よ……自分の名前は、思い出せたのね?」

        こくん、と頷く。

        「自分の名前や、ここが『葵屋』だって事…爺やたちの事は、思い出せた」

        要するに、目が覚めた直後は一時的なショックで記憶障害になっていたが、
        自分にとって近しい事柄から少しずつ思い出してはいるのだ。
        この分だと負担を掛けないようにしながらゆっくり情報を与えて行けば、恵の事や剣心達の事も思い出せるだろう。

        怪我の具合を見せて貰ったが、確かに白や翁達が言っていたように外傷そのものは大した事はなかった。
        吐き気なども、特にしないと言う。

        「うん、この程度の怪我なら大丈夫。痕も残らずに綺麗に治る筈よ。
         自分の不注意で貴女の顔に傷が残ったりしたら、御頭さんが立ち直れないものね」

        可笑しそうに恵が笑う。本当に痕が残ったら笑えないが、大丈夫だと思えばこそ言える冗談だ。
        だが、操は困ったような顔で恵を見上げていた。

        「どうしたの?気分でも悪い?」
        「いえ……そうじゃなくて」

        少し、言い淀む。

        「爺や達に聞いても、はっきり教えてくれないものだから……御頭さんて、一体……?」

 

        恵はようやく翁達が是が非でも自分をここに呼んだ理由、そして蒼紫の苦しそうな表情の訳を悟った。
        操は、蒼紫の事だけ思い出せないのだと―――

 

 

        それから数週間、恵は葵屋に滞在しながら操の経過を見守った。
        額の傷は痕も残さずに綺麗に治ったが、その傷が癒えても記憶は完全には戻らなかった。
        自分の名に始まり、幼い頃に亡くした両親のこと、京都御庭番衆の仲間たち、葵屋の事。
        そして恵の事や東京の剣心達の事も、その間に少しずつではあったが操は記憶を取り戻していった。

        だが、彼女にとって恐らくは一番大事であった筈の男の事だけは、思い出どころか名前すら思い出せないままだった。
        葵屋にもう一人背の高い若い男が居る事は判ったが、彼の名が『四乃森蒼紫』である事や、
        御庭番衆の御頭であった事も、知らされるまでは何一つ判らなかったのだ。

        蒼紫は恵と翁達に、自分の事は名前以外は告げるなと口止めした。
        話さなければならないのなら自分の口から全てを話す。
        だからそれまでは、操に自分に関する記憶の回復を強要しないようにと―――
        心の病に薬はない。
        必要なのは、時間と安静―――そう言う意味では、蒼紫が焦って操に無茶を言わないのは、医者としてはありがたかった。

        操はぼんやりと時間を過ごす事が多くなった。
        以前のように葵屋の手伝いもするが、暇な時には縁側に腰を下ろしてぼうっと空を見ている事が多い。
        思い出せない『何か』があると言うことは、それだけ記憶に様々な欠落があるという事を意味する。
        ましてやそれが、蒼紫に関する記憶であれば無理もない―――
        恐らくは、操の記憶の大半は、彼に関する物であったであろうから。

        蒼紫もまた、葵屋に戻ってきた当初のように、自室に篭もる事が多くなった。
        食事の時には座敷に出てくるが、喋る声を聞いたのは、恵が葵屋に来たその日が最後だったように思う。

        『まあ、無理もないけど』

        恵は嘆息するしかない。
        聞けば蒼紫は、事故が起きるほんの少し前に、近いうちに操と祝言を挙げると仲間に明らかにしたばかりだったのだと言う。
        これから自分や剣心たちの所にも、その旨の報せを出す筈だったのだと、翁が教えてくれた。
        将来を誓い、これからの人生を伴侶として生きていく筈だった少女を、突然の事故が襲った。
        命にこそ別状はなかったが、その代償として操の中から蒼紫の存在は喪われてしまったのである。
        向けられる笑顔はそのままなのに、その瞳に映る自分は、彼女にとってはもはや他人なのだ。
        それがどれ程、蒼紫にとって酷な事か―――想像するだに、ぞっとする。

 

        いつものように操の様子を見に行くと、彼女は縁側に座って庭を眺めていた。

        「操ちゃん、気分はどう?」
        「あ、恵さん」

        声をかけると、屈託のない笑みが返って来る。

        「お陰様で、変わりないです」

        変わりない―――それは、蒼紫の事はまだ何も思い出せないという事に他ならなかった。
        ここ二週間は、さっぱり進展がない。
        少しずつ様々な事を思い出しているうちは、何かの拍子に蒼紫の事も思い出せるのではないかと、
        多少の楽観はしていたのだが。
        今はもう、そんな楽観は気休めにしかなっていなかった。

        「操ちゃん、何を見ていたの?」

        操の視線は庭を見ていたが、そんなにじっと眺めるような物があっただろうか。
        季節柄咲いている花は少ないが、辛うじて庭の彩りとなっている椿も、彼女の視線の先には存在しない。
        すると操は、庭を挟んで反対側にある部屋を指差した。

        「あの部屋を」
        「あそこって……御頭さんの……?」

        そう、と頷く。

        「あそこは蒼紫様のお部屋なんですよね。私は、入った事がないけれど」

 

        残酷な、言葉。

        以前通り『蒼紫様』と呼んではいるが、篭もる感情は全く違う。ただ周囲の者がそう呼ぶから、倣っているに過ぎない。
        記憶を喪っているのだから仕方がないとは言っても、とても蒼紫に聞かせられたものではなかった。
        蒼紫が意図的に彼女との接触を避けているのは、ある意味正しいのかもしれない。
        これでは蒼紫の方が心を病んでしまいそうである。勿論、避けているだけでは何ら解決にはならないのだが。

        「理由は判らないけど、ここでこうしてあの部屋を見ていると、何かを思い出しそうで」

        そう呟きながら、自分の胸を押さえる。

        「胸に、ぽっかり穴が空いてるみたいなんです……
         ほとんどの事は思い出した筈なのに、あたしは、まだ何かとても大事な事を思い出せていない」

        恵が目を瞠る。やはり操は、自分で気付きつつあるのだ。
        蒼紫がどれ程、自分にとって大事な存在であったのか―――記憶は無いのに、無意識下で彼の存在を欲している。

        「きっと、その答えは蒼紫様が持っている……だけど、あの人は何も言ってはくれない」

 

        食事の時に顔を合わせる機会があっても、蒼紫は自分と言葉を交わそうとはしなかった。
        視線を感じてその気配に彼を振り返っても、そのまま視線を逸らされてしまうのだ。
        喪われたまま未だに戻らない記憶の鍵を、蒼紫が持っていると感じた自分の勘は間違っているのだろうか。 

 

        「…多分、それは間違っていないわ。貴女の勘は、確かだと思う」
        「恵さん……」

        はぐれた子供のような瞳で、操が恵を見上げる。そんな彼女の視線を、恵は姉のような眼差しで受け止めた。

        「貴女の記憶が戻るのを、誰よりも御頭さんは待っている。私の口からは、これだけしか言えないけど……」

        操の手を取り、力強く握り締める。

        「自分の内の心の声を聞いて。何が、操ちゃんにとって一番大事だったのか……その心の空白が、一体何なのか。
         その答えは、貴女の心の中にしかないのだから」

        命すら賭けて、操がたった一人と決めた人。
        思い出せない筈がない。このままでは、蒼紫も操も余りにも哀しすぎる。

        「私達は、貴女が『帰って』くる日を待っているから」

        操は瞼を伏せ、微かに睫毛を震わせた。

 

 

        奥の間で蝋燭の灯り一つで座禅を組んでいた蒼紫は、背後の気配に閉じていた瞳を開けた。

        「……何か用か」

        キュッ…と板張りの廊下を踏みしめ、恵が奥の間に足を踏み入れる。
        スタン、と後ろ手のまま障子を閉めた。ほのかな灯火に、恵の色の白い顔が照らし出される。

        「操ちゃん……記憶は戻っていないけれど、貴方が喪われたままの記憶の鍵だと言う事には気付いてるわ」

        静かに蒼紫が振り向く。恵は障子を背にして立ったまま、自分を見下ろしていた。

        「もう少しなのよ。必要なのはきっかけだけだわ。焦る必要は無いけれど、きっかけがないと目覚める記憶も目覚めない」
        「……俺達の事は、そっとしておいてくれ。他人には、立ち入られたくない」

        ほとんど表情すら変えないまま呟いた蒼紫に、恵の柳眉が吊り上がる。

        「操ちゃんの中から貴方の存在が喪われて、誰よりも貴方が辛い思いをしてる事は判ってるわ!
         だけど貴方は、真っ直ぐ操ちゃんに向き合うのを恐れて逃げてるのよ。
         きっかけがあれば思い出すかもしれない。だけど、もしかしたら二度と自分の事を思い出す日は来ないんじゃないかと怯えて。
         彼女の中に自分は居ない。あの瞳に映る自分は、もう彼女にとって他人なんだと、思い知るのが怖くて!!」

 

        自分の言葉は、蒼紫の胸を抉るだろう。
        唯一と決めた少女の心から自分の存在が消え失せ、今も紅い血を流し続けているその瑕を。
        だが引く訳にはいかなかった。医者として、そして女として―――

        「操ちゃんは、貴方の事を待っているのよ!?貴方だけが、自分の喪った記憶の鍵だと信じて!」
        「―――お前に、何が判る!?」

        血を吐くような、その叫び―――恵が思わず息を呑む。
        これ程までに感情を露にした蒼紫は、今まで一度たりとも見たことが無かった。

        「俺の一生をかけて守ると誓った。命尽き果てるその瞬間まで、操の為に生きると。それなのに―――!」

        ギリ、と悔恨に握り締められた拳から血が流れ出る。
        自分が御せなかった馬の蹄が、彼女を傷付けた。自分の手で、操を傷付けたも同然だと。

        「操の中に、もう俺の存在は無い。向けられる笑顔も、呼ぶ声すら……操は、俺に関する全ての記憶を喪ってしまった。
         あの時、子供を受け止めた操を俺が避けられなかったばっかりに!!」

 

        悔やんでも、悔やみきれない。
        自分の身を斬り刻んで、操の記憶が戻ると言うのならそうしただろう。
        自分に対する感情が完全に欠落した状態で向けられる彼女の笑顔を見る事は、蒼紫には耐え難かった。
        だから静かに時を待つ事にしたのだ。
        時間をかける事で操の記憶が戻るのなら、自分は何十年でも待つ。
        例え、彼女の記憶が戻らなくても―――操さえ変わらず幸せであるなら、傍で、見守る事は出来るからと。

 

        「貴方はそれで良くても、操ちゃんはそれを望むかしら」
        「何……?」

        恵の声は静かだった。一度は逆立てた柳眉も、露になった蒼紫の感情を目の当たりにして、幾らか穏やかになっている。

        「あの子は思い出そうとしている。自分にとって『大切な何か』を、まだ思い出せていないんだって、操ちゃんは気付いてる。
         きっかけさえあれば思い出せるかもしれないのに、貴方は失敗を恐れてその可能性を潰すの?」

        蒼紫は答えない。だがその面には、確かに葛藤が渦巻いていた。

        「……貴方の記憶を喪う事で―――」

        恵が一歩、蒼紫に近付く。その気配に、蒼紫が顔を上げた。

        「心の半分が空っぽになってしまう程、彼女は貴方の事を想ってたのよ。
         想って想って……だから、一番大きなその想いが喪われた」

 

        記憶は、天秤に乗せられた錘だと思えばいい。
        天秤を等しく保つ小さな記憶の集まりと、ただ一つの事に関する大きな記憶。
        どちらも皿から零れ落ちたとしても、小さな記憶のかけらは少しずつ元に戻せばいい。
        だが大きな記憶のかけらが零れ落ちる時、その大きさ故にはずみで何処かに転がり落ちて見失ってしまったら?
        そのかけらを見付け出さない限り、喪われた記憶が完全に戻ることは無い。
        操が蒼紫の事を強く想っていたからこそ、その想いの深さが仇になった。

 

        「操ちゃん、胸に穴が空いたみたいだって言っていたわ。
         何が思い出せないのかすらも判らない筈なのに、それでも彼女は、貴方がその鍵だと気付いた。
         それ程までに想われているのに、いつまで貴方は操ちゃんに背を向け続けるの?」

        ゆらりと蝋燭の炎が、恵の気配に震えた。
        蒼紫の瞳が微かに揺れる。

        「俺は―――」

        逃げていたのだろうか。
        例え時間がかかっても静かに彼女を見守るのだと、自分に言い訳をして。
        操の中に再び自分を取り戻せる可能性があるのなら、
        結果を恐れずに彼女に相対する事こそ、自分の成すべき事ではなかったのか。

        「きっかけは必要だと思う。だけど、正直上手く行くかどうかは判らない。
         それでも……貴方は、操ちゃんと向かい合うべきだわ。彼女を、本当に取り戻したいのなら」

        恵の瞳が、まっすぐ蒼紫を見た。

        「……万が一、彼女の記憶が戻らなくても―――あの子は生きている。その事を、忘れないで」
        「生きて―――?」

 

        『何処に居ても、何をしてても、蒼紫様は……生きてるんだって』

        ただその事実が嬉しかったのだと。
        いつか聞いた操の言葉が蘇る。

 

        「一生をかけて、守ると誓った子でしょう?彼女の為に生きるのだと。
         例え記憶を喪ってしまったのだとしても……きっと何度でも、同じ相手を想う。
         何もかも喪った訳じゃないわ。操ちゃんの記憶が戻らないのなら―――最初から、同じ相手と……もう一度恋に落ちればいい」

        何度でも。
        我が身の半身とまで想った人となら、不可能ではない筈だ。

        蒼紫の瞳が、驚きに瞠られた。
        紅を引いた恵の唇が、笑みを浮かべる。

        「一度は捨てた筈の命でしょ?―――みっともなくても、格好悪くても……
         足掻いて足掻いて、最後までとことん意地を張り通してごらんなさいな。それが、今貴方が操ちゃんの為に出来る事よ」

        そう言って、とん、と軽く蒼紫の胸を叩いた。

 

 

        一体自分にとって、四乃森蒼紫とはどのような存在だったのだろう。
        部屋の月見格子から月を眺めながら、操は蒼紫の事を考えていた。

        目が合っても、会話を交わした事はほとんどない。せいぜい、すれ違いざまの挨拶程度のものだ。
        翁やお近たちも、あまり蒼紫の事には触れようとしない。
        他の者はそれぞれ愛称で呼び合うのに、蒼紫だけは皆、『蒼紫様』と敬称を付けて呼んでいた。
        御庭番衆の御頭であった事から考えれば当然かもしれないが、
        彼の事を何一つ思い出せない自分は、ただ皆が呼ぶように倣っただけである。

 

        『だけど……何か違う気がする』

        四乃森蒼紫という名は、もっと特別なものではなかったか。

        「四乃森…蒼紫」

        名を呼んで、胸が痛くなるのは何故なのか。
        どうして彼の姿を、目で追ってしまうのだろう?

        「蒼紫……様」

        繰り返される、その呟きに。

        「操」 

        不意に掛けられた声が重なり、操が瞳を瞬かせる。
        月見格子の向こう側に、月光に照らされて見惚れるばかりの長身があった。

 

        「蒼紫…様?どうしたんですか、こんな所から」

        こうして話し掛けるのは、初めてのような気がする。
        いつも遠くから見ていた横顔が、手を伸ばせば届く距離にあるのが不思議な気持ちだった。

        「お前の顔が見たかった」

        囁きと共に、蒼紫の手が操の頬に触れる。

        「……どうして」

        顔に髪が落ちかかり、彼女の表情が見えなくなった。だが、手に伝わるのは微かな震え。
        蒼紫は両の腕を伸ばすと、そっと彼女の頭を胸に抱いた。

        「どうして……こんなに胸が痛いの?あたし、貴方の事、何も思い出せないのに」

        名を呼ばれただけで、胸が締め付けられる。
        手を触れられただけで、震えるような感情が湧き起こる。
        その感情を、何と呼べば良いのかも判らないのに。

        「判らない……こんなに苦しいのに、貴方の事何一つ」

        見詰める蒼紫の瞳は、凪いだ水面のように静かだった。一瞬その瞳が、月光を映して淡く光る。

        「教えて。貴方は、私にとって掛け替えのない人だった?私は、貴方にとって必要な人間だった?」
        「俺は―――」

        一度、蒼紫の腕が操の頭を強く抱く。

        「俺は、お前の夫となる筈だった男だ」

 

        その一言に。

 

        「……え……?」

        告げられた事実に、愕然とした表情が浮かんだ。
        緩めれた腕から離れ、蒼紫の顔を見詰める。

        「夫……貴方が?」
        「そうだ。あの事故がなければ、今頃祝言を挙げている筈だった」

 

        ふらり、と操の上体が揺れた。その身体を、蒼紫が支える。

        「そんな……あたし、どうして……」

        そんな大事な人の事を、忘れてしまったのだろう?
        他人のように自分を映す瞳を目の当たりにして、彼がどれ程苦しんでいたか。
        ズキンと鈍い痛みが頭に走り、操が額に手を当てる。

        「ひとつだけ、お前に伝えたかった」
        「……何を?」

        蒼紫の指が、今は短く切り揃えられた操の髪を愛しげに梳く。
        長く伸ばされていた彼女の髪は、彼女自身の意思によって、二人が将来を誓った日に切り落とされた。
        あの日から、自分は操の為に生きると誓ったのだ。それは、今も変わらない想い―――

        「俺は、お前を生涯守ると誓った。お前の為に生きるのだと。
         例えお前の記憶がこのまま戻らないのだとしても、この誓いを違える気はない」

 

        そっと口付けた操の頬には、瞳から零れ落ちた涙があった。
        大きく見開かれた瞳から、とめどなく溢れる涙が蒼紫の指を濡らしていく。

        頭が痛い。何かが頭の内を強く叩いているようだった。
        ちかりと一瞬垣間視えた光景に在ったのは、幼い自分と、自分を見守る誰かの姿。
        人生の最期に見るという走馬灯が巡るように、断片のような映像が次々と頭に浮かんでは消えて行く。

 

        小さな自分。大好きな誰かが居なくなってしまったと、声を上げて泣いた。
        少し背が伸びて、誰かを捜す為に翁達の制止を振り切って葵屋を飛び出した。
        長く伸びた髪。目の前には血の海に沈む翁―――立ち尽くして声も出ない自分の背に、懐かしい声は別れを告げた。
        自分の半身とも思っていた誰かを、永遠に喪う予感に流した涙。
        そしてただ一人と決めた人と、結ばれた夜の、胸を満たした至福の想い―――
        自分だけに見せてくれる、あの優しい瞳の主は誰……?

 

        「幾度運命に引き裂かれても、必ずお前を選ぶ。俺にはお前しか居ない―――それが、俺にとっての全てだ」

 

        抱き締められた腕の中で―――

        欠けていたパズルの最後のひとかけらがカチリと音を立てて、元の場所に収まる。
        怒涛のように押し寄せる記憶の波に、操は一瞬、気が遠くなった。
        ガクリと膝から力が抜ける。

        「操!?」
        「あ……おし……様」

        ぎゅっと掴まれた腕に、今までにない力を感じた。

        「操……お前……」

        もしやという思いに駆られて、髪が落ちかかって影になった操の顔を覗き込んだ。
        この世の全てとも想った瞳が、真っ直ぐに自分を見詰める。
        その瞳に映されるのは見知らぬ男か、それとも命すら分かち合うと誓った存在か―――

        「蒼紫様」

        繰り返し囁かれた、その名。
        瞳には、紡ぎ出される言葉以上の想いが在った。

        「思い出しました……あたし、やっと……」

        腕を伸ばし、蒼紫の顔に触れる。もうどれだけ、このように彼に触れていなかっただろうか。
        今胸を満たすのは、ただ愛しい男への想い―――

        「ごめんなさい。あたし、どれだけ蒼紫様を苦しめたか」

        たった一人と決めた相手に全てを拒絶される痛みを、自分は知っている。
        事故とは言え、自分の最も大事な人に同じ痛みを与えてしまった事に、操が新たな涙を零す。

        「もういい……もういいんだ」

        蒼紫の腕が、優しく操の肩を抱いた。

        「高荷恵が言っていた。大きな想いだからこそ、喪われたのだと」
        「でも、あたしは……!!」

        叫びかけた唇が、口付けで塞がれる。
        深く、優しく―――

        「お前は戻って来てくれた……それだけで、全て癒される」

        蒼紫の腕に抱かれて、操は静かに涙を流した。
        どんな時にも自分を見守り続けてくれた、彼の想いの深さを噛み締めながら―――

 

 

        「本当に良かったわ。無事に記憶が戻って」
        「どうもご迷惑おかけしました。恵さんも、自分の診療所があって忙しいのに」

        すっかり以前通りの記憶を取り戻した操が、翌日改めて恵の使う部屋を訪ねた。
        蒼紫の記憶が無かった時も操は操に違いなかったが、やはり受ける印象が違うと感じる。
        例えば瞳に宿る力。例えばほんの僅かな言葉の端々。
        全ての記憶が戻ることで、やっと本来の彼女自身を取り戻せたのだろう。

        「そんな事、気にしなくていいのよ。友人の一大事に役に立てないようじゃ、どんな病も怪我も治せないわ」

        カラリと恵が笑って見せる。
        そんな彼女の鷹揚さが、操はとても好きだった。

 

        「でもねぇ、今度葵屋に来る時はお祝い事の時にしたいわね。一大事で飛んで来るのは、二度で十分」

        こればかりは半ば本気で、笑みに混ぜて口の端に乗せる。
        事故は彼女の責ではないが、人の一生に収支があるとすれば、そろそろおめでたい話が続いてもいいだろう。

        「ところでこれは医者としての純粋な好奇心なんだけど、一体御頭さん、どんな手を使って貴女の記憶を戻したの?」
        自分がその蒼紫を焚き付けた張本人だという事はお首にも出さず、頭の上にぴょこりとキツネの耳を出して操に顔を寄せる。
        操の頬にさっと朱が走った事に恵は気付いたが、口に出しては何も言わなかった。

        「……内緒です。でも……蒼紫様が居なかったら、きっと記憶は戻らなかった」

        顔を真っ赤にしながら答えた操は、だがとても幸せそうだった。

 

        以前彼女と会ったのは一年程前の事だが、以前には感じられた子供っぽさが抜けたような気がする。
        髪が短くなっただけの印象の違いではなく、女としての色艶が加わったようだ。
        それはやはり、惚れた男に一生を添い遂げる喜びと自覚が、彼女を美しく見せているのだろう。
        ほんの少し、羨ましい気もした。
        自分とて想う人が居ない訳ではなかったが、その相手は、今何処の空の下を彷徨っているのやら

        『ま、生きてさえいればいいわ。絶対に白いお米が恋しくなって、戻ってくるに違いないんだから』

        晴れた空を見上げ、目を細める。
        庭に植わった梅の木には、小さな花が咲こうとしていた。命芽吹く春はもうすぐ―――

        「祝言の日取りが決まったら教えて頂戴。剣さんたちと、必ずお祝いに来るから。
         オメデタの時も、この高荷恵におまかせよ。何人でも、取り上げてあげるわ」
        「はい、必ず!」

        操の笑顔に惹かれるように、梅の梢がさわりと揺れた。

                                                              【終】


        あとがき

        一月生まれの蒼紫のお誕生日記念SSです。そして、ごく限られたBBS観覧者の皆様、お待たせいたしました(笑)
        一時掲示板の方で話の出ておりました、操の記憶喪失SSをお届けします(^_^)
        操のお誕生日記念と同じく、背景に少々重い素材を使いました。しっとり系にしたかったので…

        以前ファンタの方で記憶喪失ネタはやっていたのでどうしようかなと思ったんですが、確かにジャンルが違うんですよね。
        ジャンルが違う以上、書き手の方にガッツがあればどうにかなるかと(笑・なってるのかしら……)
        いやもう、途中経過に悩む事悩む事。
        まず事故のきっかけ。頭を殴られるのは『闇に棲む炎』でやってるから除外して、高い所から転落するようにしようとか。
        じゃあ高い所って何処だと考えれば、屋根の上や崖、木の上など。
        でもどれも何か違うなぁと数日考えていた折に、ふっと浮かんだのが馬。
        落馬事故という手もあったけど、実際に使用したのは本編中のエピソード。
        蒼紫が手綱を取るシーンもあって二倍美味しい……とか言っていられる場面じゃないんですけどね、本当は(笑)

        あと記憶を喪った操に対しての蒼紫の接し方ですね。
        少し後ろ向き過ぎたかしらーなどと、打ちながら思ったりもしました。
        恵に発破かけられてあのような展開になりましたが、実はもっと後ろ向きな蒼紫になる筈だったんですよ。
        操に『愛してる云々』という手紙を残して、姿を消させようかなと。
        その手紙に衝撃を受けた事で記憶が戻り、今まさに葵屋を出ようとしている蒼紫に縋りつく、
        というお話になる予定でした。ギリギリまで。
        でもそれじゃ、男として失格だと思い直し、本編のように。

        操の事はずっと見守るけれど、正面きって接するのは流石に辛い。だから距離を置いていたんです。
        そしてもしも自分に対する記憶が戻らず、彼女が別の誰かに恋したなら、自分は黙ってその事実を受け容れようと。
        例えどんな形でも操が幸福であるなら構わないと、蒼紫には蒼紫なりの覚悟も決意もあったんですが、
        恵にはばっさり斬り捨てられてましたね(笑)
        恵は女の視点で考えてますから、『男の都合なんか知らないわよ』と。
        でもやっぱり操の本当の幸せは蒼紫と共にある事だと思うから、恵には私の意見を代弁して貰いました。姐さん、素敵(^_^)

        今回は甘いシーンも(凄い深刻な場面ですが)あった代わりに、とことんこだわった事がひとつ。
        これはウチの他のるろ剣のSSでも言える事ですけど、『愛してる』と言わせない事。
        数少ない語彙を総動員して考えましたよ(^_^;)でも、その甲斐あって満足のいくお話に出来たと思います。

        SS製作中に聞きっ放しにしていたMDは、名付けて『蒼紫×操スペシャル』(笑)
        雰囲気に合うかなと、『〇の蜃〇楼』のイメージサントラから寄せ集めた代物ですが、
        特に頭の中をエンドレスだったのは『氷結の夜』のピアノバージョンと『飛翔〜終わらない夢〜』、
        『飛翔』のピアノ&チェロバージョン、あと『皆既月蝕』。他にもあるけどぐるぐるぐるぐる(笑)
        全くジャンルの違うイメージサントラの曲にも関わらず、完全に私の中では蒼紫×操ソングになってます(^_^;)

                                                              麻生 司

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