君と紡ぐ夢


初めて逢った時から忘れられなかったのは、穏やかな瞳と優しい声。
私は、あの人の笑顔が大好きだった。

ずっと、大好きだった―――

 

グラン歴779年、冬。
その年は例年にない豪雪で、セリス率いる解放軍は、ミレトスの国境に程近いルテキアでの越冬を余儀なくされた。
本来ならば拉致された子供たちを救う為に少しでも早く進軍したい所であったが、この雪と寒さではどうにもならない。
レヴィンが独自に放っている者の情報では、ミレトスの国内から子供たちが出た形跡はないという。
さしものユリウスもこの酷寒の中、大勢の子供を連れての移動は困難とみたのだろう、というのがレヴィンの見解である。
ならば勝負は、雪解ける春。
それまではしばし休息の時を、このルテキアで過ごすしかなかった。

 

そのルテキア城の一角にある談話室で、少女達が数人、お茶のカップを傾けつつ話に花を咲かせていた。

「え、アーサーと?」
「良かったわねぇ。おめでとう、フィー!」

ナンナとラナが手のカップを受け皿に戻し、ぱちぱちと手を打って、頬を朱に染めたフィーを祝福する。

「でもまあ、不思議なものよね。出逢ったきっかけから腐れ縁で、軽口叩き合う相手だったのに…」


レンスターの地で、アーサーに軽くいなされた。
いつも一人で飛んで行ってしまうんだから、気をつけろ―――と。
どうせ無鉄砲だと言いたいんでしょ、と強気に言い返したフィーに囁かれた言葉は―――


『フィーは特別だからな…』


「いつの間にか側に居ないと、落着かない…なんてね」

照れたフィーの顔は、だがとても幸せそうだった。


その後二人は相談し、一緒にシレジアに帰ろうと約束した。
アーサーはヴェルトマー公爵家のアゼル公の息子。母はフリージ公爵家のティルテュ公女である。
この戦が全て終わった後、本当にその約束が果たされるかどうかは判らないが、
一緒に帰ろうと言ってくれたアーサーのその言葉が、フィーは素直にただ嬉しかった。


「未来の義姉様、どうぞよろしく」

紅くなったフィーにティニーが微笑みかける。フィーが軽く肩をそびやかす。

「ありがと。でもお互い様でしょ、ティニー?」
「え?」

ティニーが不思議そうに首を傾げる。

「ウチのお兄ちゃんよ。ティニー、最近よく一緒にいるでしょう?珍しいのよ。今までそういう事、無い人だったから」


世が世ならシレジア王家の跡取として生を受け、かつ聖戦士の力を継承し、それでいて性格は真面目で穏やか。
今まで浮名が流れなかったのが不思議なくらいであるが、
フィーが第三者の立場で見ていた限りでは、兄のセティに今まで浮いた話は存在しない。


「お兄ちゃんも貴女の事、気にしてるようだし。
 勿論ティニー自身が望んでくれれば…の話だけど、お兄ちゃんの側にティニーが居てくれるのなら私も安心だし、嬉しいんだけどな」
「私が…セティ様の側に―――?」

その名がとても意外なもののように、ティニーは確かめるように口の中でゆっくりと呟いた。


風の聖戦士の血と名を受け継ぐ、心優しき賢者―――セティ。
マンスターを襲ったトラキアの竜騎士隊は、彼の持つフォルセティの圧倒的な力の前に壊滅した。
解放軍に合流した直後、その彼が真っ先にセリスに尋ねたのは、マンスターから脱出した人々の安否。
全員無事に保護された事を伝え聞くと、

『良かった…それだけが気がかりだったんです』

―――そう言って、安堵の笑みを浮かべたのだ……


「…なんて優しい方なんだろう…って、思ったわ。
 一緒に居るだけで心が和む…幼い頃からずっと感じていた寂しさも感じなくなった。
 確かに私は、あの人を特別に思っているのかもしれない―――でも、それは多分、私の独り善がり」

唄うようなその声に、フィーの眉が僅かにひそめられる。

「セティ様は誰にでも、皆同じように優しいわ。私はその中の一人なの。特別な訳では…ないのよ」

ティニーの瞳が、寂しげに伏せられる。だが―――


「そんな事ないわよ」

やんわりとした否定の声の主はフィーだった。妹に諭すように語り掛ける。

「さっきも言ったけど、世間話でもなんでも、とにかく女の子と二人で一緒に居るって事がお兄ちゃんにとっては既に特別なんだから」

するとナンナとラナもそう言えば、とフィーの後を継ぐ。

「ティニーと話してる時の表情が、他の人の時とは全然違うのよね」
「そうそう。普段から優しい方だけど、一層優しい目をされるのよ」

ティニーの肩に手を置き、フィーが微笑んだ。

「ティニー、そう悲観しないで。お兄ちゃんはきっと、貴女の事を特別に想ってる―――だから、自分に自信を持っていてね」

 



ティニーは雪が小止みになった時に、ルテキアの城下町に出た。
敢えて誰も誘わず、一人で何処へ行く当ても無くゆっくりと街を歩く。

―――お兄ちゃんはきっと、貴女の事を特別に想ってる―――

『そうフィーは言うけれど…』

人の心までは判らない。
フィーはセティの実の妹だから、おそらく彼女の言葉は真実に近いのだとは思う。
だけど自分が想いを寄せる人はあまりにも多くの人の敬愛を受ける人で、決して自分一人だけの存在にはなり得ないのだという、不思議な自覚もあった。

ふう、と小さく溜息をついてふと広場の噴水に目を向ける。
雪の積もるこの季節、噴水も池の水も凍り付いているのだが、そのほとりに見慣れた顔を見付けた。コープルである。
彼は一人ではなかった。小さな女の子と、その弟くらいの歳の男の子が、コープルの服の裾をしっかりと掴んでいる。
その子供達の視線に合わせるように膝をつき、笑顔で何事かを話し掛けているようであった。
漏れ聞こえる声を拾い聞くと、コープルに『早く行こうよ』と急かしているらしい。


「コープル?」
「あ、ティニーさん」

コープルが立ち上がり、ティニーににこっと笑いかける。

「何をしてるの?こんな所で」

子供たちは小声で『知らないお姉ちゃんだね』と囁きあっている。
でもその視線に不審さはなく、むしろティニーに対する好奇心が勝っているようであった。

「丁度良かった。ティニーさんも一緒に来ませんか?」
「一緒にって…何処に?」

「ここから少し山側に入った所にある孤児院で、セティさんが子供たちに物語を話してくれるんですよ」

「私も行っていいの?」
「勿論、お客様は多い方が良いですから。セティさんは照れるかもしれませんけど…それはそれという事で」
「まあ」

コープルの茶目っ気のある言い方に、つられて笑みが浮かぶ。

「じゃあ、私もお邪魔させてもらおうかしら」
「ええ、どうぞ」

わーい、と元気の良い声をあげたのは子供たちである。お客様大歓迎な様子に、ティニーは少しホッとした。

「お姉ちゃん、おいでよ!こっちこっち!!」

すっかり警戒心を解いた子供たちに手を引かれて、ティニーはコープルの後に続いた。

 


「あれ?ティニーじゃないか」

小さな小屋の扉をくぐると、中は暖炉の炎で暖められていた。
コープルや子供たちに続いて入って来たティニーを見て、セティが薪を手にしたまま驚きを浮かべる。
暖炉の前には、他に二人の子供が居た。どうやらここに住む孤児達は全員で4人らしい。

「お邪魔します。麓でコープルとこの子達に誘われて」

セティの目が穏やかに微笑む。

「そうか。外は寒かったろう?もっと火の側においで。ほら、君たちも」
「はあーーい!」


子供たちはくっつき合うように身を寄せ、暖炉の前にティニー達が座る場所を空けてくれる。
暖炉の前には粗末だが清潔な毛皮が敷かれており、火の側という事もあってとても暖かかった。

「セティお兄ちゃん、今日のお話は?」
「そうだね、どんな物語にしようか」
「あたし、お姫様の出てくるお話がいい!」
「いいよ。じゃあ今日は、北の国のお姫様の物語だ」

どうやらセティは既存の物語だけではなく、即興で物語を作って聞かせているらしい。
子供達のリクエストに応じて、その日話す物語を決めているのだ。

「セティ様もコープルも、ここは初めてではないのね。子供たちがあんなに懐いて」

話し始めたセティと、真剣に耳を傾けている子供達の邪魔にならないように、ティニーが小声で隣のコープルに囁く。

「ええ、以前から時々。屋根や床の補修をしたり、今日のように子供達の相手をしたり」

返すコープルも、邪魔をしないように小声である。

「でも先にここに通われていたのはセティさんです。僕はセティさんよりも、少し遅れてこの施設を知りました。
 セティさん、ここには三日と空けず通われているんです。本当に…優しい人なんですね」
「―――そうね」

ティニーの顔に、柔らかな笑顔が浮かんだ。

 


その日からティニーも、折に触れその孤児院を訪ねるようになった。

子供たちに字を教えたり、本を読んであげたり、繕い物や食事の支度など出来る事には限りがあったが、自分でも何かが出来るのだと思える事が嬉しかった。
そして何よりも子供達の笑顔が励みになった。
いつしか城での役割分担が当たっていない時は、ほとんど孤児院で過ごすようになっていた。
そしてそれはセティやコープルも同じであったらしく、よく三人で連れ立って、雪深い道を孤児院へと通った。


「子供たちは?」

ティニーの小さな囁きに、やはり小声でセティが応える。
四人の子供たちは二つのベッドに分かれて、すやすやと寝息を立てていた。

「もう眠ってしまったよ。ずっとコープルが雪合戦に付き合ってくれていたから、遊び疲れたんだろう」

その声には微量の笑いが込められている。
コープルも隣の部屋の暖炉の前で、うとうとと舟を漕いでいた。
その彼の肩に毛布をかけてここへ来たティニーの表情が僅かに曇る。

「…疲れるのも無理ありません。まだ皆こんなに小さいのに、朝早くから山羊の乳搾りや市の荷運びを手伝っているのですもの」


子供達の世話をしてくれていたシスターは、冬を迎える前に若くして流行病で亡くなったと聞いている。
村の人々の善意で小屋はそのまま子供たちに残され、何とか食い繋げるだけの食料を分けてもらっているのだ。
子供たちを引き取ろうかという話もあったのだが、離れ離れになる事を子供たち自身が厭い、今に至っている。
幼い子供たちは、一生懸命自分で自分を守っているのだ。出来る限りの、精一杯の事をして―――


「私…ほとんど何も出来ない自分が悔しくて…」

ティニーが己の非力さを恨むように、ぎゅっと胸の前で手を握り締める。
自分達がここに来れるのは、この冬の間だけだ。
この冬だけなら、四人をルテキアに保護する事も出来る。だがそれでは根本的な解決にならない。
子供たちは互いに離れる事を拒み、今の生活を選んだ。
それが判っていたから、セティ達もここに通いはしても、城に保護しようとは言い出さなかったのだ。


「ティニー…ここの子供達の母親は流行病や事故で亡くなっているけれど、父親は―――皆、傭兵となって…そして、戻って来なかったんだそうだ」
「え……?」

静かに告げられた事実に、ティニーの表情が固くなる。

「もしかしたらこの子達の父親を手にかけたのは自分かもしれない。そう思うと…正直、恐ろしくなるよ。
 あの笑顔を、欺いているんじゃないか…とね」


『お兄ちゃん!』

無邪気にそう呼んでくれるのは彼らの信頼の証。だがもしも、欺かれているのだと彼らが疑ったら?

自分達の父親を奪ったのが、セティかもしれないと気付いたら…きっと、あの笑顔は永遠に失われてしまうだろう。
それが戦というものなのだと頭では判っていても、心のどこかが冷たく凍える。


「僕は本当は戦う事は好きじゃない。だけど―――僕が戦う事で、一日でも早く戦が終わるのなら…
 一人でも多くの命を救う事が出来るのなら、僕は―――戦う事を選ぶ」

戦は新たな孤児を生む。
土地は痩せ、飢餓が生き残った人々を襲う。その矛盾を、忘れている訳ではないけれど―――

「僕一人の力では、為せる事はそう多くない。この子達を守る事が今の自分に出来る精一杯なら、なんとしても守ってやりたい。
 そして願わくば、これから生まれる子供たちには、戦の無い平和な世界を残してあげたいよ」


セティの横顔に淡い笑みが浮かぶ。
自分の内に矛盾を抱えながらも、子供達に向けられる眼差しは何処までも優しい。
罪は全て自分の中に。そしてどうかこの子供たちに、等しく幸福が訪れますように。
それだけは曇りの無い、真実の願い―――

ティニーはぴんと張り詰めたようなセティの笑みに、だが確かに魂を揺さぶられるような何かを感じた。


そう、私はこの人の笑顔を好きになった。
時折浮かぶ、触れたら壊れる硝子細工のようなその笑顔を守る為に、私でもお役に立てるのならば―――


「セティ様の志が、一日でも早く為されるように私もお祈りしています」
「…ありがとう」

出来る限りの事を、私はしよう―――

 



毎日のように続く吹雪は、やがて人々の外出も難しくさせていった。

ティニーも既に三日間、城から出れずにいる。
セティ様達はどうしたかしら…?少しでも吹雪が弱まれば、今日にも様子を見に行くと言っていたけれど。
そう考えていた矢先、俄かに城の大広間が騒がしくなった。


「セティとコープルが戻っていない?」

セリスの声が広間に響く。その前に立つのはアーサーだった。

「行き先は?判っているのか?」

シャナンが確認すると、アーサーがすぐに頷く。

「ルテキアに入ってからずっと気にかけていた孤児院が心配だから様子を見に行くと言って…
 先程少し吹雪が和らいだ時に、二人で出て行ったきりなんです」


アーサーとセティは、ルテキア城で同じ部屋を使っている。
その関係もあってアーサーも孤児院には足を運んだ事があり、今日も一緒に行こうかと言ったのだが、あまりにも酷い雪なのでセティ達に止められたのだ。
セリスが『ああ』と手を打つ。

「少し山側に入った所にある孤児院だな。僕もセティから話は聞いている」

山側、と聞いてオイフェが眉を寄せた。

「セリス様、山の方では雪崩の危険があると報告が入っています。早く二人を呼び戻して、子供たちも安全な麓に保護しないと」


降り続いた雪が限界に達しており、今日にも雪崩が起きるだろうと、地元の住民から城に報告が寄せられていたのだ。
既に山間に住む住民は麓へと避難してきていると。
急がなくてはならないが、この雪では雪に不慣れな者ではかえって身動きが取れない。
一体どうやって彼らに危機を伝えるべきか短い議論が交わされる。その時―――


「私が行きます!」

はっきりと通る声が広間に響いた。

「ティニー!?」

声の主だけは落着いて、だが周囲はざわりとどよめく。

「ティニー、気持ちは判るけど、女性の足ではもう外を歩くのは無理だよ」
「私は何度もあの孤児院に通っています。ラナのワープで送って貰えれば大丈夫です!」

セリスの言葉にもティニーは屈さない。セリスは傍らのラナを振り返った。

「出来るかい?ラナ」

少し考え、ラナが小さく頷く。

「…この場合、対象となるティニーの記憶だけが頼りになりますが、それさえ確かなら問題ありません」

ラナの答えを聞き、セリスは決断した。もう迷っている時間はない。

「……少しでも急いだ方がいい。ティニー、危険だがワープで先にセティ達と合流してくれ。
 他の住民たちも安全な場所へ避難させつつ、僕たちも出来る限り早く合流する」

広間にラナのワープ魔法の呪文の詠唱が静かに響く。

「それまでセティとコープルと力を合わせて、子供たちを守ってくれ」
「はい!」


呪文の詠唱が終わり、転移魔法が完成する。ティニーの身体が淡い光に融けて行く。

―――どうか、皆無事でいて!!

祈りの形に組み合わされた手もそのままに、彼女はルテキアから転移した―――

 




ゆらり、と視界が歪んだように感じたのは一瞬だった。
意識が急速に鮮明になる。霧がかった周囲の光景がはっきり見えてくる。

「ティニー!?」
「ティニーさん!」

驚きの声は子供たちを抱いたセティ達の声だった。間違いなく転移出来た事に安堵し、次いで彼らの無事に安堵した。

「セティ様、コープルも皆もよく無事で…!」

完全に実体化した彼女に男の子の一人が駆け寄り、ぎゅうっと足に抱きついた。
心細かったのだろう。ティニーは優しくその背中を撫でた。


「ラナのワープか…しかしティニー、今ここに来るなんて無茶な事を!!」
「無茶は承知の上です。でも時間が無くて…!」

セティがすうっと顎を引いて頷く。その瞳は、今までに無いほど緊張したものだった。
彼は雪国であるシレジア生まれのシレジア育ちだ。気付いていたに違いない。

「雪崩だろう…判っているよ。さっきから時折、不気味な山鳴りが聞こえてきている。
 ここで少しでも吹雪が和らぐのを待ちたかったんだが…これ以上は、もう無理だ。子供たちを連れて、ここを出るしかない」


外は猛吹雪だ。小屋全体がギシギシと嫌な音を立て、今にも吹き飛びそうだった。
子供達の足では、深く積もった雪の中を歩くのすら困難だろう。だがこのままここに居ても、遠からず雪崩に飲まれてしまう。

「コープルのお兄ちゃん、これから何処に行くの?」

手分けして子供たちにコートを着せていたコープルに一人が尋ねる。
大きな瞳には、不安と迫る雪崩の恐怖に満たされていた。

「心配ないよ。皆でもっと、安全な所に避難しようね」

コープルも不安には違いなかったが、子供たちにそうと感じさせないよう、つとめて平静を装った声で小屋を出る事を告げた。

 


少しでも早く、少しでも遠くにと、逸る気持ちを抑えながら子供達の手を引いての避難が始まった。
子供の足では膝の上まで埋まる雪の中である。
セティとコープルは身体の小さな子を一人ずつ抱いて進んだが、残りの二人はティニーに手を引かれながら自分の足で進むしかない。

「お姉ちゃん…苦しいよ!」
「大丈夫?お願い、頑張って!!」

ティニーの体力では、一番小さな子でも抱いて歩くのは無理だった。
小さな身体で精一杯歩く子供たちを励ましつつ、少しでも早く麓へと避難しなくてはならない。
だがそんな焦る思いとは裏腹に、雪に取られる脚は重く、遅々として進まなかった。


どうか間に合って―――!


だがそんな彼らの祈りを裏切るように、不気味な山鳴りが大気を震わせた。


ドオオオオォォォ
ォォォン
……


「この音……まさか、もう……?」
「セティさん、あれ……!!」


呆然としたティニーの声に、コープルの叫びが重なる。
コープルが指差す山肌を、恐ろしい速さで滑り降りてくるのは白い瀑布―――!!

「早すぎる―――!」

絶望的なその光景に、セティは蒼白になった。


―――麓まで辿り付く時間はもう無い。どうすればいい?あの雪崩から、皆を守るにはどうすればいい!?―――


コープルが、ティニーが、圧倒的な自然の脅威を前に、無力に立ち尽くしていた。
子供たちは互いに身を寄せ合い、確実に迫り来る死の奔流に怯えて泣きじゃくっている。

自分とて同じだった。自分の手を見、そしていや違う、と呟く。
今の自分にはフォルセティしかない。フォルセティで雪崩を支えきるしか、救かる道は無い。
その術法は消耗が激しすぎる。だが、過ぎた力を天から与えられた自分にしか出来ない事だった。


やるしかない―――!


「風よ―――」

雪崩の迫る轟音の中で、朗々とセティの声が響き渡る。

セティは轟音に負けまいと声を振り絞っている訳ではなかった。
それなのに、彼の紡ぐ呪文ははっきりと傍らのティニー達の耳に届いてくる。まるで声そのものに彼の魂が映されたかのように。

「この地を守護したもう風よ。我が名はセティ、古の風の王の血を受け継ぎし者」

胸の前で印を切る手の中に淡い光が宿る。


風よ、どうか僕に力を…皆を守れる力を―――!!


「その偉大なる力をもって、我等を守る障壁と為さん」

呪文が完成に近付くにつれ、コープルとティニーの顔色が変わる。
セティが一体何をしようとしているのか、本能的に悟ったのだ。

「フォルセティで雪崩を防いで…!?セティさん、無茶です!!そんな術法を使ったら、貴方の身体が―――!」

一瞬だけセティが振り返る。絶対に守ってみせると、その唇は呟いた。

「フォルセティ!!」



「きゃあああぁぁぁぁ!!」

呪文の完成と共に、雪崩が周囲を真っ白に染めた。
コープルや子供たちと互いに繋いだ手がそのままである事に気付き、轟音の中そっと目を開ける。
周囲は舞い上がる雪煙で何も視えない。
霞む視界の中、それでも雪崩の勢いをフォルセティの力で支えるセティの姿だけは判った。


セティは渾身の力でフォルセティを制御していた。
色の白い横顔に、幾筋もの汗が流れては落ちる。
魔法というのは、決して無限に扱える物ではない。自分の精神力を、魔法という形で具現化させる力なのだ。
故に相性の悪い魔法や無茶な術法の使用は、そのまま術者を消耗させるという形で跳ね返ってくる。
このままではコープルの言う通り、セティの身体の方が術に耐えられなくなるのは時間の問題だった。


「せめて負担を減らさなければ……」

そう思わず口にしたティニーの脳裏に、閃くものがあった。


『ティニー、このエルウィンドの魔道書を君に』
『私に?よろしいのですか』
『雷と炎の魔道書を自在に操る、今の君になら扱える。
 だけど君が風魔法を使えば今まで以上の負荷が掛かる筈だから、十分に気を付けて―――』


それは上級魔道士の資格を得てから、セティにエルウィンドの魔道書を譲り受けた時の事だった。
エルウィンドの力は、今もこの手の内にある。


私が風魔法を使えば、以前とは比較にならない程の負荷が―――


それは確かに実戦で経験済みだ。連続行使をすれば、炎や雷の魔法を行使した後とは比べ物にならない程消耗する。
だが、そんな事を気にしている場合ではなかった。
セティが斃れるような事があれば、彼の力だけで支えられているこの雪崩はすぐにも全員の命を飲み込むだろう。
フォルセティでも支えているのがやっとのこの雪崩に、自分の力がどれ程役に立つのか。


―――でも、一人の力よりは―――!


ティニーの瞳が力を帯びる。
自分の左右につながれた子供達の手を互いに繋ぎ合わさせると、ティニーはゆっくりと立ち上がった。
コープルが訝しげに彼女を見上げる。

「ティニーさん?」
「…コープル、子供たちを守っていてね」
「ティニーさん、何をする気なんですか!?」

彼女の顔に迷いはない。強い決意を瞳に宿し、そっとセティの隣に立つ。

「フォルセティの負荷を、少しでも軽くするのよ」


一度だけ、深く深呼吸する。

「この地を守護したもう風よ―――」

声が震えるかと思ったが、紡ぎ出された声は意外にしっかりしていた。

「―――我が声を聞きたまえ。その自由なる力をもって、我等を守る障壁と為さん」


かざした掌に光が集まる。
命を賭ける事になるかもしれない。セティとて、この術法は生きる力そのものを削るものだと判っている筈だ。
だが、それでも―――


『これがセティ様の為に、今、私が出来る事…私の出来る全て―――!!』


「エルウィンド!!」


エルウィンドの発動で確実に障壁は力を増し、徐々に雪崩が押し返されていく。

「よし、もう少しだ!!」

負荷の軽くなったセティが叫んだ。
ティニーの横顔にも汗が滑る。だがエルウィンドの制御は揺らがない。

「雪崩が収まっていく……」

コープルの呟きが遠くに聞こえる。
轟音は次第に遠のき、障壁によって塞き止められた雪の壁が彼らの周囲を囲むように聳え立つ。


そして、静寂が訪れた―――

 



「止まった―――」

呟いたのはどちらだったのか。
セティもティニーも呼吸が荒い。上下する肩ごしに振り返り、セティがコープルと子供達の無事を確かめた。

「コープル、皆も大丈夫か!?」

子供達の様子を見、コープルが大丈夫ですと頷き返す。

「僕たちの事よりも、セティさん達です!あんな無茶な術法を使うなんて…」

流石にセティも肩を竦めて見せた。

「ああ、正直寿命が縮んだよ。ティニーの援護がなければ恐らく保たなかった。ありがとう、ティニー」


どういたしまして、セティ様。


いつもと変わらぬ明るい笑顔が答えてくれる筈だった。
返事が無い事をいぶかしみ、彼女の方を振り返る。
視界に映ったのは、周囲の雪と見紛う程に蒼白な顔色のティニーの姿―――

「ティニー?」

セティの目の前で、彼女の身体が糸の切れた人形のようにゆっくりと、雪の中へと倒れ込む。

「ティニー!!」

抱き起こしたセティの腕の中で、ティニーは意識を取り戻した。
だが顔色は真っ青なまま、呼吸も安定していない。それだけでセティは、彼女の身に何が起こったのか察した。

「しっかりしろ、エルウィンドの負荷が大きすぎたんだな…!?」
「ティニーさん、しっかりして下さい!」
「…ごめんなさい、セティ様…エルウィンドを使う時には気を付けるように言われていたのに…私の力が至りませんでした…」


コープルが彼女の体力を回復させるべく、治癒魔法を唱える。
だが、特に治癒魔法に長けた彼が繰り返し試みても、ティニーの容態は良くならない。

コープルは愕然としてセティを見、そして力なく首を左右に振った。セティの瞳が見開かれる。
まさかという思いを、コープルの悲痛な表情が打ち砕く。
ティニーの生命力は既に尽きており、治癒魔法はもう何の意味も為さないのだと―――


「少しでも貴方のお役に立ちたかったから…後悔はしていません」
「ティニー、もう喋るな!!」

腕の中の彼女の身体が、みるみる体温を失っていく。確実に忍び寄る不吉な予感が頭から離れない。
だがティニーは微かに笑みさえ浮かべると、更に言葉を紡いだ。

「…どうか、あの子達に…新しく生まれる子供達に、平和な世界を―――」

鼓動が間遠くなる。呼吸が浅く、短くなっていく。

「ティニーお姉ちゃん、死んじゃやだよぉ…!」

子供たちははっきりと、彼女の命の灯火が消えようとしている事を悟っていた。
泣きじゃくり、服の裾を掴んで、必死にティニーの命を繋ぎとめようとする。


ティニーは一度だけ、セティの顔を見上げた。
彼女の紫水晶の瞳に、今にも泣きそうな自分の姿が映っている。

「ただひとつ…貴方と同じ時間を生きられない事だけが…心残り……」

ゆっくりと、ティニーの瞼が落ちる。


「ティニー……?」

声が震える。彼女の唇に手を触れる。
だけど吐息のような呼吸さえ、もう指に感じない。そして―――


鼓動が、消えた―――


「嘘だ…そんな、君が―――」

声が詰まる。叫びたいのに、声にならない。


ぱたり、とティニーの白い頬に何かが落ちる。
それが自分の流した涙であると気付いた時、セティは命を失った彼女の身体を抱き締め、天を仰いで絶叫した。


どんな夢でも、彼女と二人でなら叶えられると信じていた。
二人で叶えたい夢だったのだ。それなのに―――!!


『セティ様、いつかきっと夢を叶えてください』


いつかの彼女の言葉が、鮮やかな笑顔と共に蘇る。
だがそんなものは何の慰めにもならなかった。
ティニーはもう笑わない。その笑顔は、永遠に失われてしまった。

「君を失って僕はどうすればいい?一人で夢を追える程、僕は強くない。君の命に代えられるものなど、何一つ在りはしないのに―――!!」

慟哭の中で叫ばれたセティの言葉は、コープルにある決心をさせた。


「セティさん、まだ希望はあります」

ティニーの身体を抱いたままのセティの正面に、同じく膝をついて彼の顔をまっすぐに見る。

「ティニーさんの天命が尽きていないのなら、まだ間に合います。
 子供たちと我々を身を挺して救ってくれたティニーさんの為になら、ブラギ神もきっとお許しになられる筈」
「コープル……」

セティの瞳に、僅かに希望の火が灯る。
今こそブラギの血が甦る時―――応えるようにコープルは、手の中の杖を握り締めて頷いた。

「聖杖バルキリーを使います」

立ち上がり、一歩の距離を取る。そしてセティと子供たちを、優しく見回した。

「強く祈っていてください。そして、信じてください。ティニーさんの蘇生を―――」

セティが血の気を失ったティニーの頬に落ちかかった髪を指で払い、唇にそっと口付ける。
そして、彼女の身体を強く抱き締めた。
その周りを囲む子供たちも、皆一様に祈りの形に手を組み、必死の面持ちだった。


皆の祈りは強い力となる。
バルキリーを使うのは初めてであったが、不安はなかった。
こんなにもティニーは欲せられている。その彼女が、ブラギ神に認められない筈がない。

「―――生命司りしブラギ神よ、我らが祈りに応え給え」

杖を翳し、魂に刻まれた聖なる呪文を天へと謳い上げる。

「彷徨える彼の者の魂を、再び在るべき肉体へと呼び戻し給え―――!」


聖杖バルキリーよ、あの優しき魂に今一度の生を―――!!


コープルの祈りが、セティの想いが、子供達の願いが形となる。
聖杖が眩い光を発し、その光がティニーの身体を包み込んだ―――

 


『ティニー』

―――セティ様……?

『ティニーさん』

―――コープル……

『ティニーお姉ちゃん』

―――皆、私を呼んでいる……

それぞれの呼び声はひどく鮮明で、ティニーはゆっくりと瞼をあげた。

そこは白い光に満たされた世界―――
身体を起こしたものの、横たわっていたのが何処かの床なのか、剥き出しの地なのかも判らない。
自分の名を呼ぶ声は、今も天から降る光と共に感じる。
愛しい声に応えたかったが、どこかで冷静な自分がそれを止めた。


―――ごめんなさい。私の身体は、もう力尽きてしまったの―――


ティニーは自分の死を淡々と受け容れていた。
悲しくはあったが、後悔はしていない。
あの時自分がエルウィンドを発動させていなかったら、セティの命はなかった。
彼を失う事など考えられなかったから、そうする事が自然な行為なのだと信じられた。

だが―――


『ティニー、戻りなさい…貴女の魂はまだ不帰路を辿ってはいない』


柔らかな女性の声が、優しく彼女を包み込む。


―――え…?でも、私は……


戸惑いを隠せないティニーに、声の主は微笑んだようであった。


『ブラギの血を継ぐ者と貴女を愛する人達が、貴女の命を望んだのです。その祈りは成就しました』


淡い光が像を結ぶ。穏やかな微笑みに銀の髪を揺らし、そっとティニーに手を差し伸べた。
その手を取り、在り得ない温かさを感じた瞬間、ティニーは弾かれたようにその女性を見た。


『彼も、貴女を失っては生きていけないのよ。その事を忘れないで』


ゆらり、と像が霞む。一瞬見(まみ)えた面影は、夢のように掻き消えてもう感じられない。


―――待って、この声…貴女は……!?


『生き延びて…そして、きっと夢を叶えてね。果たせなかった、私達の分まで―――』


―――お母様―――!!

 



「ティニー!?」
「……セティ様……?」

瞳を開けると、すぐ側にセティの顔があった。

「ブラギの神よ、感謝します!!」

次の瞬間には、しっかりと彼の腕の中に抱き締められる。

「ティニーさん…本当に良かった…」
「わぁい、ティニーお姉ちゃん!!」

コープルはバルキリーを手に、ほっと安堵の笑みを浮かべていた。
子供たちは彼女が目を覚ました事に大喜びし、賑やかに周りを囲む。


セティは彼女を抱き締めたまま、涙を流した。よく還ってきてくれたと、誰憚る事無く―――
ティニーの頬にも、我知らず涙が零れる。


『彼も、貴女を失っては生きていけないのよ。その事を忘れないで』


不思議な世界で聞いた声が胸を満たす。
自分の命を呼び戻したのは、愛する人たちの祈り―――そして、ようやく巡り逢えた…唯一の人の声。


その人が流した涙を、私は、決して忘れない。


ティニーはまだしっかりとは力の篭もらぬ手で、セティの背を抱き返した。

 



それからようやく合流出来たセリス達は、事の顛末を聞き、驚愕したと同時に、事無きを得て胸を撫で下ろした。

危うく一命を取り留めたティニーと、術の行使で消耗の極限に達していたセティとコープルは、数日の絶対安静を言いつけられた。
それでも男性二人の回復はまだ早く、二日後には出歩いて良しとのラナの許可が出た。


「それでは子供達の引き取り先、決まったんですね?」

ティニーは自分の使っている部屋の寝室で、セティからその報告を聞いた。
ちなみにフィーが同室なのだが、『ごゆっくり』と言い残して、兄のセティと入れ替わりに部屋を出て行っている。


子供達は一時的にルテキア城で保護されていたのだが、セティとコープルが動けるようになってすぐにセリスに働きかけた。
この城に、住み込みで置く事は出来ないかと。

「僕たちがここに居る間は様子を見る事も出来るし、いずれこの土地の誰かに城を任せて出征する時も、
 彼らの状況をよく判った人に頼めば安心だ。
 その辺りの人選には心当たりがあるし、四人が離れたくないと言っているのなら、結局それが一番だろうと思って」

勿論、城の賄い方や買い物、洗濯、馬の世話など城の雑事を手伝って行く事になる。
だがいずれ望めば士官も出来るし、何よりも衣食住に困らない。
今まで住んでいた場所を失った以上それが最良だろうと、セリスも快諾した。


「でも本当に良かった。私、それだけが気がかりで」

笑ったティニーの顔色は、まだ本調子とはいかないまでも随分良い方だった。しかし、つい心配になってしまう。
彼女の頬に手を伸ばし、その温かさを確かめて問い掛ける。

「ティニー、君の身体はもう大丈夫なのかい?」

なにせ一度は心の臓が止まったのだ。だがティニーは柔らかく微笑むと『はい』と頷いた。

「強いて言うなら少しだるい程度なんですけど…兄様やラナ達がすっかり心配してしまって。
 床から離れるのはもうしばらく先になりそうです」
「はは、それは仕方ないな」

セティの顔にも苦笑が浮かぶ。

「アーサーの気持ちは僕にも判る…彼には散々怒られた」


セリスと共に合流したアーサーが、実はティニーが一度死線を越えたと知るや、長く伸ばした銀髪が逆立つのではないかと言う程の剣幕に陥ったのだ。

『なに、ティニーが死にかけた!?しかもコープルのバルキリーがなかったら手の施しようがなかったって!!?
 セティ、お前がついていながらどういう事だあぁ―――――!!!!!』

セティも同じく妹を持つ身として、そして何よりも目の前で彼女の命が一度は失われる瞬間を目の当たりにして、アーサーが怒るのも無理はないと思う。
だから彼は真摯にアーサーに頭を下げた。金輪際、決して彼女をそんな目には合わせないと彼に誓ったのだ。
そのセティの誓いに、彼は一発殴らせるという事で矛を収めた。


「フィーがいなけりゃ、殴られるくらいじゃすまなかったな。全く、返す言葉もない」

左の頬が少し痣になっていると思ったら、どうも兄が殴った痕らしい。
怒り狂うアーサーを、宥めてすかしてどうにか落着かせたのは、他でもないフィーだった。

だがセティとアーサーの間柄がそれで気まずくなったかと言えばそういう訳でもなく、
今でも同じ部屋で寝起きし、食事も一緒に摂れば、訓練も城の警備も相変わらず同じローテーションだという。
最終的にティニーは蘇生し、一命を取り留めたのだからそれで良しという事らしい。


寝台に半身を起こした彼女の手を取り、セティがティニーの顔を覗き込むようにして見詰めた。

「…僕の腕の中で冷たくなってゆく君の身体…止まってしまった鼓動―――今、思い出しても心臓が凍り付きそうな思いがする。
 そうして…思い知ったよ。僕にとって、君の存在がどれ程掛け替えの無いものだったのか」

世界から色彩が消え失せ、虚無が心を満たしていく―――そんな暗い、心の深淵を垣間見た。
狂気と隣り合わせの絶望から彼を救い出したのは、コープルが行使した聖杖の力に他ならない。
もしもティニーの蘇生が成っていなかったなら、自分は正気を手放していたかもしれなかった。


「…ならばずっと、私をお側に置いて頂けますか?」

そっと囁いたのはティニーの方だった。

「ティニー?」

繋がれた手に、微かに力が篭もる。

「私はずっと、只一人と決めた人のお役に立ちたかった。そして変わらず、その人の側に居たかった。
 そうする事で、幼い頃からいつも感じていた孤独から解放される事……それが、私の夢―――」

瞳が合う。そこに浮かぶ想いは、二人とも同じだった。

「私で、良いのですか?」

強く握り返された手が彼の答え―――微笑むティニーの紫水晶の瞳に涙が浮かぶ。

「君と二人でなら、叶えられない夢など何一つない」

 

それから数ヶ月の後に、聖戦は終焉を迎える。
二人は誓いを交わしながらも、その聖戦士の血故に、
セティはシレジア国王として、ティニーはフリージ公爵家当主として、一度は別離の道を受け容れた。


だが復興が急速に進んだ更に数年後、二人は国境を越えて結ばれる事となる。
シレジアに末永く伝えられる事になる、賢王セティとその花嫁ティニーの物語である―――

                                                     【FIN】


あとがき

FE聖戦本『Ewigkeit』から、セティ×ティニーのSS版です。元は30Pのストーリー漫画。
基本的に漫画に忠実に書き起してますが、雪崩のシーン以降は少々アドリブが。
セティのティニーへの想いの深さは、SSの方がよく出てるんではないかと思います。

フォルセティやエルウィンド、そしてコープルのバルキリーの杖等を使う際に唱えている呪文は、お話を書くのに私が創作したものです。
まあ魔法の名前を必殺技よろしく叫ばせてもいいんですが、それでは書いてて味気ないもので(笑)
大体攻撃魔法ならともかく、人を蘇生させるのに『バルキリーッ!!』とか叫んでるのって、変でしょ?(^_^;)

私は魔法は無限に使える物だとは設定していません。
優れた術者なら、ある程度の無理は利きますし応用も可能ですが(今回のセティやティニーのように)、
それでも無理な使い方をするのは命の危険が伴なうんです。ティニーが一度は心停止状態になったのもこのせい。
倒れこそしてませんが、同じような力の使い方をしたセティや、聖杖を使ったコープルも限界まで体力を削って力を行使してるんですよ。
これに関しては他のキャラでも使っている設定なので(誰かはUPしてのお楽しみ)、機会があればまたそちらの方もUPします。




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